里山十帖に泊まる 後編 〜本当の贅沢について考える〜
里山十帖に泊まる 後編 〜本当の贅沢について考える〜
ずっと訪れてみたかった里山十帖。ここはただの旅館とは違います。五感をフル活動させ…いえ自然に五感は研ぎすまされ沢山のインスピレーションが感じられる、そんな宿。後編は「ミシュランガイド東京」のスターシェフ 目黒『ラッセ』村山太一シェフとのコラボディナー。お料理、満点の星空、里山の朝食と、素晴らしい体験が続きました。
目次
里山さんぽ
里山十帖では毎日「お散歩」が開催されているそうです。この日は里山十帖の北崎裕シェフ(写真右)とコラボディナーで腕を奮ってくださる目黒『ラッセ』の村山太一シェフ(写真左)が案内人でした。村山シェフは南魚沼の隣町十日町出身で、小さい頃からこの地の自然の恵みを存分に満喫していたんだとか。
外はすっかり秋の終わりで冬の始まりという季節。澄み切った空気をたくさん吸って深呼吸。さんぽの始まりです。
村山シェフと北崎シェフです。お二人は「ミシュランガイド関西」で現在は三ッ星、京都の「吉泉」で修業した兄弟弟子なんだとか。
緑の壁。この一面すべて食材に使える山菜というからビックリ。タンポポやフキなど天ぷらにして食べるととっても美味しいとのことです。
田んぼも近くにあります。既に収穫は終わって少し寂しい景色でしたが、夏の青々とした田園風景、重くずっしりとした稲穂が実る収穫前の風景、美しい景色が頭に浮かびます。
さんぽには沢山の方が参加されていました。深呼吸するとスーッと冷たい空気が身体をめぐりますが、これがすごい気持ちいい。空気って美味しいですね。
さんぽの後は、冷えた身体をほっこり温めてくれる甘酒が振る舞われました。お米とお水だけ。他のものは一切入っていないシンプルなお味ながら自然の甘さに改めてビックリします。
コラボディナー「マンマの味と郷土の味。村山太一の源流を探る」
さあ、待ちに待ったディナーの始まりです。里山十帖では月に1回、縁のあるシェフをお呼びしてコラボレーションディナーが開催されています。今回のシェフは「ミシュランガイド東京のスターシェフである、 目黒『ラッセ』の村山太一シェフ。テーマは「マンマの味と郷土の味。村山太一の源流を探る」。
イタリアのマンマの味を大切にする村山シェフが、新潟・魚沼の素材で幼いころの食卓を思い出しながら素晴らしいお料理を振る舞ってくださいました。イタリアンを魚沼産の食材で頂く。こんなイタリアンは初めてで驚きの連続でした。
まずは前菜。あれ?外ですか?! おぉ、さむい!!
株式会社自遊人クリエイティブ・ディレクター岩佐氏からのご挨拶に続いて、村山シェフから前菜の説明がありました。
よく見てください。干した稲に何かがぶら下がっています。フィンガーフードです! 醤油味のコシヒカリのコルネットとトマト味の煎餅餅。閉ざされる冬の直前の空気を感じながら、代々続く雪国の日常食を食べてほしいというシェフの願いから前菜が外で振る舞われました。確かにこの塩っぱさが寒さと合う! 煎餅餅が置かれている台は、雪国ならではの根曲がり杉を使ったもの。幼少の頃にこの木の根元で遊んでいたんだとか。とても素敵なイタリアンにアレンジされているのに、雪国の日常を彷彿させる前菜には驚きがいっぱいでした。
お部屋に戻ってきました。温かい^^
寒さを感じると部屋の暖かさが身にしみます。
テーブルには沢山の落ち葉が。日常の生活ではモミジとイチョウくらいでしか紅葉を感じることがないのですが、自然の色はとても美しいです。ついパシャリと写真を撮ってしまいます。
お部屋でのお食事が始まりました。
冷えた身体を温めて冬に備えます。かぼちゃのスープです。
バターは手作りで牛乳から作っているとお聞きしました。パンの塩味で頂くのでバターは無塩。
生ハムと茸・手打ちパスタ山菜和え・蒟蒻カルパッチョです。見た目は和食なのにお味はイタリアン。
「魚沼やさいと子ども遊びの戦利品」と名づけられたサラダ。小さなお皿の中で、賑やかな子どもたちの声が聞こえてくるようでした。
お食事と一緒に頂くお酒ももちろん新潟県産のものばかり。新潟県が誇る八海山のお酒も振る舞われました。
「合作 魚沼の雪国田舎料理と北イタリア平野の田舎料理」お味はけんちん仕立てです。
むかごと舞茸の炊き込みリゾット・赤かぶと鯉のアクアパッツァ・お漬物です。最後までイタリアンなのに雪国を感じるお食事でした。
秋のスイーツです。栗のショコラ・八海山酒粕クリーム・ダルペスカトーレ直伝のバニラジェラート。甘いものに目のない私、既にお腹はいっぱいでしたが、濃厚なショコラもジェラートもクリームもペロリと頂きました。美味しかった。
最後は無花果餅です。中には柿が入っていました。
素晴らしいお食事を振る舞って下さった「ラッセ」のスタッフのご紹介です。ホールスタッフも含めお店まるごとこの里山十帖へやって来ました。近々目黒のお店にもぜひ足を運んでみたいです。
続いて里山十帖のキッチンスタッフの方々です。この地の食材を知り尽くしたスペシャリストなくして今日の料理は実現しなかったと思います。
そして最後に影の立役者、お米やお野菜などを作られている地元農家の方々のご紹介がありました。
普段忘れてしまいがちな作り手の存在。この方々の存在なくしては美味しい食事を食べることはできないんですよね。
一年かけて大切に育てられた食材を、いつも以上に感謝しながら頂きました。
夢のようなお食事でした。初めてお会いした方々とのお食事でしたが自然とどのテーブルも会話に花が咲き、和やかでアットホームな雰囲気でした。
沢山のインスピレーションを感じながら、美味しくって感動のお食事でした。
満点の星空
美味しいディナーの後は温泉を堪能しました。お腹も満たされ温泉にゆっくり入って身体をほぐそう…幸せ^^と思っていたら、実はさらなる幸せが。大浴場から見える星空の素晴らしいこと! ちょっとやそっとの星空ではありません。まさに満天の星空です。
そういえば、おさんぽの時に星空を見るスポットの説明があったな。
さ、温泉で身体をしっかり温めて、夜のおさんぽに出かけましょう。
宿の玄関には熊よけの鈴と懐中電灯が用意されており、いつでも夜さんぽできる準備が整っています。宿から数分歩くとすっかり明かりは消えて真っ暗に。
写真がうまく撮れず、お見せできなくてすいません…
空気も澄み渡っているせいか、月が見えないせいか、こんなに星ってあるんだなと。流れ星を探したのは言うまでもありません。
里山の朝食
気持ちのいい朝です。美味し空気を胸いっぱい吸い込んで、まずは朝風呂。遠くの山まで見えました。
さて、里山の朝食です。里山十帖では食事でいちばん大切にしていることは「食材の力を感じていただくこと、体がスーッと軽くなる料理」だそうです。無農薬・有機栽培の野菜を中心に肉と魚を少しづつ、調味料はすべて天然醸造・無添加にこだわっています。
魚沼産コシヒカリの新米です。有機栽培や減農薬栽培の米作りに取り組む今井さんのお米を、研ぎ水から炊飯まですべて大沢山の湧き水を使って炊き上げてあるとのこと。お米一粒一粒が立っていてツヤがありふっくら炊き上がっています。どれも美味しいおかずだらけでしたが、新米が主役と言わんばかりの食卓はなんとも贅沢さを感じました。
たっぷりお野菜を頂くための野菜鍋。木桶で仕込んで3年以上も熟成させた自遊人特製のお味噌で頂きます。いわゆる豪華な食材ではないけれども、素材の旨味が存分に堪能できる朝食は、日本人なら誰もがこういう朝食を毎日食べたいんだよねと思うお食事でした。
贅沢について考える
エキサイティングなことを求めている癖に、結構五感は鈍っている毎日を送っていることを実感した滞在になりました。
寒いな、もう秋は終わって冬がそこまで来てるんだな…、沈む夕日が綺麗だな…、
満点の星空に流れ星を探すことに必死になってみたり、何を願うか一番のお願い事を考えてみたり。そんな他愛のない思いを体験してください、そんな時間を過ごしてください、という旅館。
ゆっくり過ごすこと、何も考えないことも一つの贅沢、だけれども少し意識しながらたくさんのことを感じてみる、五感を研ぎすませてみる、そこで感じるインスピレーションは素晴らしい体験であり何事にも代えがたい贅沢の一つであると感じました。
また季節を変えて、自然を感じに、美味しいお食事で体の中からデトックスをしに、鈍った五感を研ぎ澄ませるために訪れてみたいです。