巨樹ツアー 第11回「天神宮のケヤキ、塀をまたぐ」

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巨樹ツアー 第11回「天神宮のケヤキ、塀をまたぐ」

この連載で僕がたびたび使ってるフレーズ、「植物は自分の生長に限界を設けない」。巨大ケヤキが点在する長野県東信地方に、そんなケヤキの巨樹が存在しています。樹齢は1000年を超えるという。本殿の神域に足をかけ、落雷をものともせず生き続ける。そんな限界知らずの老樹を訪ねてきました。

「困った木」としての伝説


長野県の東信地方、なかでも上田市、佐久市、小諸市は、巨樹化したケヤキがたくさん存在している地域です。
今日はそのなかの一つ、長野県上田市の岩下という集落にある天神宮(天神社・天満宮)に来ました。

千曲川沿い、田野を前にひときわ目立つ独立木があります。

近づいてみます。

素晴らしい。

言い伝えでは、かつてはもっと大きかったようで、遠く離れた田んぼまで影で覆ってしまうため、尊崇される神木というより「邪魔な木」「困った木」でもあったそうです。

本殿の神域へと、またぐ。

しかし、今でも十分、大きいです。

そして何といっても、この木は根元が素晴らしい。

神域を跨いでます。

本殿領域に足をどんどん伸ばしています。

しかし、よく見るとブロック塀が幹にめりこんでいない。
どうも塀があとで作られたようです(ブロック塀に建て替えられる前の塀はもしかしたらめりこんでいるかもしれません)。

雷さまの伝説


裏側はこんな具合。

落雷で焼かれてしまっています。

こんなふうに田野にひとつ、独立木として幾星霜もの歳月そそり立っているのだから、落雷被害の一つや二つは免れ得ないのでしょうね。

もう一本、東側にもケヤキの巨樹が並立しているのですが、

こちらも落雷で中心を焼かれてしまっています。

落雷がいつあったのかは不明ですが、「村人が落ちてきた雷さんを捕まえ、さらに説教までした」というチャーミングな伝説があります。
説教を受けた雷さんは、「これからは絶対に落ちません」と約束して天へ帰って行ったそうです。雷さん。。。。

慌てふためいて帰る雷さんはそのとき忘れものをしていったそうで、

これです。雷さんのおヘソです。

ちなみにこの天神宮の祭神は、菅原道真です。
菅原道真といえば、雷神です。
つまり村の神さまが村人に説教され「ごめんなさい」と謝った、ということにもなりそうです。

「ロボコップ3」という映画のエンディング場面で、資本マフィアの悪役・マコ岩松がロボコップにとっちめられ、ペコリ頭を下げ「ごめんなさい」をするシーンがありますが、それを思い出しました。

拝殿が

この微妙に傾いた拝殿にも、妙にざわざわさせられます。

そしてこの拝殿の壁に掲示された貼り紙が、

「建物が傾いています 地震の時は危険です 離れてください」
「子どもの遊び場です」

うーん。。。。子どもの遊び場に向かって傾いてるやん。。。

あらためて全容を。

リスペクト!

データ:天神宮のケヤキ


巨樹度:⭐️⭐️⭐️⭐️
上田市指定天然記念物(1977年指定)
幹周:13.5m
樹高:15m
樹齢:推定 千数百年
住所:〒386-0153 長野県上田市岩下117番地
アクセス:しなの鉄道信濃国分寺で下車徒歩15分

巨樹ツアーのオフィシャルマップもあります。
みんなも自分で見つけた巨樹を、ぜひMAPに投稿してみてください。

この記事のライター WRITER

岩田和憲

グラフィックデザイナー。言葉と写真もデザインも同じものとして扱っています。元新聞記者。元カメラマン。岐阜県出身。 https://www.iwata-design.com/