巨樹ツアー 第12回「沢尻の大ヒノキ(サワラ)、シェルターと化した枝葉」

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巨樹ツアー 第12回「沢尻の大ヒノキ(サワラ)、シェルターと化した枝葉」

荒れたままの休耕地が広がる中山間地に、まるで教会の尖塔みたいに天へと突き上げる巨樹がある。この巨樹、なにより枝ぶりがすごい。中に入るとそこは枝葉に守られたシェルターのような異空間で…

震災から7年

福島県いわき市の薄磯地区。
東日本大震災では三陸の被害がクローズアップされたこともあって、同じ東北でも福島県南部は、被害の大きさに比して救援の手がもっとも行き届かなかった場所だといわれています。

あれから7年が過ぎた今の状態です。

巨大な防潮堤が作られ宅地造成が進んでいるようですが、集落は今も消えたままになっています。
それでも一軒だけ新築らしい家が建っているその状況に、かえってしみじみとさせられます。



というわけで、せっかくいわき市に来たのでいわき市の巨樹も見に行ってきました。
このあと「アクアマリンふくしま」を見てから山間部へと車を走らせたのですが、これが随分時間がかかりました。

同じいわき市内の移動なのに、車で片道1時間以上かかりました。

あとで知りましたが、1966年(昭和41年)に合併していわき市ができた当時は、日本一広い面積をもつ市町村だったそうです。全国各地で平成の大合併が進んだ今も、全国で15番目に広い自治体だそうです。

巨樹、登場。

そしてようやく到着した、今回の巨樹の所在地。
福島県いわき市川前町です。

郡山方面へ向かう途中にある中山間地です。

休耕地が連なる里山の傾斜を進んで行くと、巨大な独立木が見えてきます。

巨樹のために建てられた鳥居が見えます。
樹勢旺盛で、これこそ「世界一のクリスマスツリー」だといいたくなる、そんな見事な三角型をしています。
ただ頂上部は少し傷んでいるようで、主幹は2本に縦裂し、針のようになっています。
これだけ堂々たる独立木なので、やはり落雷もあったんじゃないかなと思います。

写真だとどれくらい大きいかわかりにくいので、7歳児(最近カメラを向けるとやたら変顔をしたがる)に立ってもらいました。

それにしても、この巨樹、枝っぷりが素晴らしいです。

陽の光を浴びようと枝葉が地面スレスレまで伸びていて、幹近くの懐に入ると、まるで枝葉に覆われたシェルターのような異空間になってます。

日本一のサワラの木

この巨樹は「沢尻の大ヒノキ」として知られていますが、実際の樹種はヒノキではなくサワラだそうです。
昔から地元で「沢尻のヒノキ」と呼ばれて親しまれていたらしく、その慣習で巨樹としての名称(天然記念物指定名称)もそのままで登録されているようです。
ちなみにサワラとしては日本一の大きさというので、それだけでも一見しておきたい巨樹です。

根元には3つの祠。

よく見ると、でこでこした幹肌に腐りかけの奉納板のようなものが食い込んでいました。
意図してここに置かれたのか、適当にこうなってしまったのか、このよくわからない風情には、惹きつけられるものがあります。

あらためて全容を。

リスペクト!

データ:沢尻の大ヒノキ(サワラ)

巨樹度:⭐️⭐️⭐️⭐️
国指定天然記念物 (昭和49年指定)
幹周:10m
樹高:34m
樹齢:推定600〜1000年
住所:〒979-3201 福島県いわき市川前町上樋売5-ロ
アクセス:JR磐越東線夏井駅から徒歩約1時間

巨樹ツアーのオフィシャルマップもあります。
みんなも自分で見つけた巨樹を、ぜひMAPに投稿してみてください。

この記事のライター WRITER

岩田和憲

グラフィックデザイナー。言葉と写真もデザインも同じものとして扱っています。元新聞記者。元カメラマン。岐阜県出身。 https://www.iwata-design.com/