古木なデザイナーズ会議・後篇「できること、できないこと」

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古木なデザイナーズ会議・後篇「できること、できないこと」

古木を扱う内装建築のデザイナーさん6人が集合して、古木とデザインについて雑談トーク。後篇は、デザイナーとしてできることと、デザイナーではできないこと、限界について、古木の本質と絡めてトークします。

後篇「できること、できないこと」

床柱と銘木


岩田
長谷川さんは古木をどう捉えてますか?

長谷川寛(以下、長谷川)
先ほども言われましたけど、私は古木を使うとき、床柱的なものと捉えているんですよ。
やはり床柱はできるだけいいものを使いたいっていうのは昔からありますし。ケヤキを使ったりとか、銘木と言われているものをよく使ってるんですけど。
ただ、古木っていうのは銘木ではないんですよ。今となっては銘木のようになっていますけど、もともとはそのへんの柱とか梁を解体したもので、それを再利用してるっていうことですから。

長谷川寛

岩田
銘木っていうのはなんですか?

敬介
希少価値の高い材料。そういうものを銘木といって、まあ一般的には床柱に使われる。あとは床の間のような、板の目を見せるようなところに、これでもかと。

吉田
厳選に厳選を重ねた何百本のうちの1本しかないようなもの。

岩田
それは、表情で選ばれるんですか?

吉田
基本的には表情。木目とか色合いとか。

長谷川
現実的には倉庫に行って1本、1本、これがいいとか選ぶことがなかなかできないんですね。「だいたいこんな感じの」っていうので、倉庫で選んでもらうので、そこまで、こだわってるわけではないんです。
古木を使うっていうことにはこだわるんですけど、材料が曲がってようがまっすぐであろうが、そこはそんなにこだわってないですね。

古木のブームがきてる


難波
やっぱりデザインするなかでいろいろイメージを集めていると、世界的に古木みたいなものがブームだっていうのは、以前から気付いてて。
使いたいと思いながらもなかなか使えないなか、今みたいなチャンスがきて、いざ、そう思ってはいるんですけど。なかなか使い方が難しいっていうか。

岩田
ブームがきてるっていうのも結局、あれじゃないですか。ブームが来てるっていうことは実は、フェイクがいよいよ栄えていることの裏返しで、

難波
まあそうですね。

岩田
だから古木的なものが注目されるということは、いよいよフェイクの時代が来てるっていうことだろうなと。
そのうち、プリント技術の発達と、そうなると人の感受性の衰えも進みますよね、何が本物で何がフェイクかわからなくなってくる、みたいな。

敬介
あと、古木が作られるんでしょうね。

岩田
人為的に。

難波
古木がいずれなくなってしまう、枯渇するのは目に見えてるんで。

吉田
ただ、韓国・中国にはいっぱいありますよ。

難波
タイにもいっぱいありますよ。
ただ向こうのやつは釘がガンガン入ってて、えらいことになってるので。
そういう意味ではちょっと。

吉田
日本って釘を使わず組みあげるっていう昔からの作り方があるんですが、海外の場合は釘、金属を使ってやったりするんで、例えばそういうものを工場で加工するとなると命がけになっちゃうんですよ。

岩田
どういうことですか?

吉田
電動の大きなノコギリで切ったら、そこに中に釘が入ってて、ノコギリの歯があたってノコギリが粉々になって、こっちに飛んできますから。それで結構大きな事故が。
昔、枕木でそういう事故がありまして、枕木なんかも中に金属が入ってて、それを知らずに電動の大型の機械で切ったらもうやってる人が大怪我になって。
そういうこともあって、やっぱり日本のものがいちばん安心感があるっていうか。

岩田
時代の後に作ったものが後に作ったものに殺されてるっていう話ですよね。

賢太
そのとおり(笑)

岩田
あれ? 小林賢太さんもこの会議のメンバーですよね?

賢太
そうです。

敬介
いちおうデザイナーの(笑)

難波
いちおうって(笑)

岩田
いちばん熱い話ができそうな(笑)

賢太
いやいや、ぜんぜん僕は、皆さんの話を聞くばかりで…
で、なんの話を?

デザイナーは曲がった木を扱えない?


敬介
古木とわたし

賢太
古木とわたし?

一同
(笑)

賢太
それを言われたら、長い時間話しますよ(笑)
僕もいちおうデザイナーとして古木を使ってデザインをするんですけど、あのー、基本的には「こんな感じでどうですか」って飛んできた写真を見て古木を使うことが多くて。どんな古木を使うとかのこだわりはそんなになく、「どっちかっていうと曲がったものは使いたくないな」っていうぐらいで、

難波
俺も使いたくないんだよ(笑)

賢太
いや、使いたくないっていうより…

敬介
難しい。

賢太
だから僕は難波さんは天才だと思って。
よくあんなの使えるな、っていつも思って。

難波
そんなつもりはまったくない(笑)

賢太
ほんと、ナチュラルに天才だと思って。自分にはまだできないな、って。

敬介
曲がったものを使うのは、デザイナーは図面ではできない。

一同
できない。

敬介
前ね、吉田さんと一緒にやったお店があったんですけど、天井に配管があったんですよ。その部分を逃げるようにして曲がったものを作るのは、図面上では描けても、実際にそんな木があるわけない。でも、大工さんは木を見て、ちょうどここの曲がりをここにぴったりと合わせる、奇跡だなって思うようなものを作ってくれるんです。
だから、デザイナーは無理ですね。デザイナーがそこまで指示して先を読むことは。作り手とのコラボレーション的なところじゃないと。「こういうふうにしたいんだけど、いいのを探してきて」っていうくらいしか。

吉田
同じ材料で同じ図面を引いたとしても、やっぱり古木を使いなれている大工さんとじゃないと、思ったような形にならない。

デザイナーって本当に必要?


岩田
そもそも古木というものを家の建材として使ってた時代、江戸時代とかっていうのはデザイナーさんがいないじゃないですか。

敬介
だから大工さんだよね。
大工さんの棟梁さんっていうのがやっぱりスーパーマンなんでしょうね。すべてのことをディレクションしながら。
実は江戸時代は江戸時代で、その時代より前の時代の古材を再利用してるっていうこともあって。昔からそういうことはやられてるってことですよね。

岩田
本来なら必要のないデザイナーという職業の人たちが今、ここに集まってるという(笑)。

敬介
そうそう。

賢太
必要のないとはなんだ!

一同
(笑)

敬介
昔はね、大工さんと職人で、お客さんと話し合って。デザインするのは、ようは棟梁ですよね。棟梁がデザインして、自分で木を加工して、図面も、板か何かそんなものに描いて。だからスーパーマンですよね。それがどこかで分業したんでしょうね。

賢太
僕たちはある程度方向性だけ決めて、古木については会長とかそういう人たちに任せるというのが、いいものを持ってきてくれる可能性が高いなと思っていて

敬介
熱海の旅館、やってるじゃないですか。
あれはデザイナー不在で、会長と大工さんとお客さんでやった形のものなんですよ。

岩田
あれ、デザイナー不在なんですか。

敬介
不在なんですよ。

岩田
へえー。
あれは、移築?

敬介
移築でもないです。
三軒の古民家を混ぜ合わせてるんで。そうとう考えてやらないとできないものなんで。

熱海の宿「竹林庵みずの」

岩田
はあ。すごい。

敬介
そういうことなんです。だからできるんですよ。デザイナーなんかいらなくて。
ただ、今の若いお客さんの意向とかになったときは、昔のものじゃないものとかそういう要求もいろいろあるので、「そこをやるには僕らが必要だ」っていうしかないです。

デザイナーが必要なところ


吉田
民芸の世界ってあるじゃないですか。そっちの方向、囲炉裏端があってみたいな方向へ行っちゃうと、ある種の若い人たちは「泥臭くて古臭くてヤダ」って。でもそこにちょっとおしゃれさを加えるとか、そういう話になってくると我々みたいな。

敬介
そういうところで僕らの必要があるんですよ(笑)。

賢太
デザイナーっていいますけど、バランスを保つ人みたいな感じですよ。
そこに個の強いデザイナーが入ってくると、喧嘩してうまくいかなかったりする。

岩田
そういう例があったんですか?

賢太
まあ…たぶん、これから出てくると思うんですよ。

難波
これから出てくる人、誰だ(笑)?

吉田
古木を塗っちゃうっていう人、いたじゃない。

敬介
そうそうそう。

吉田
塗りつぶしちゃう、みたいな。

敬介
「白で塗りつぶすっていうのが新しい手法だ」ってね。
せっかくこの木の目で煤けたのがいいのに、死んじゃうじゃないですか。

賢太
若い子が入ってくるとそういうトラブルがあって、そこが面白かったりする部分もあるんですけど、その衝突を収めるのがけっこう大変で。

古木を加工することについて


吉田
角度を変えて見ると面白いは面白いんですよ。古木に金メッキしても面白いよね。そうなんだけど、我々は古木を生かすっていう発想なので、それはまたカテゴリーが違うというか。
面白いのは、例えばアメリカなんかは古い納屋を改装してレストランにしたりする。アメリカは戦争で空襲なんか受けてないですから、昔の建物がたくさん残ってるわけですよ。向こうの人たちはペンキ塗るのが日々の仕事というか、よっぽど好きらしくて、何回もペンキを塗って、それが剥げてまた塗り重ねて、日本とはまた違ったニュアンスの古材ができあがっていくんですよ。100年、150年経って。だからそういうのも取り入れたら少し面白いんですけどね。

賢太
吉田さんの言うペンキを塗り重ねるっていうのは、アメリカならアメリカ、その国の歴史と伝統の中でそのまま使うから正しいと思うんですけど、この古木に関しては日本のものなので、そのまま使うのが、僕、正しいと思ってて。だからそれを着色して白くしてしまうっていうのは違うかなって思うんだけど。
ただ、若い人たちがいろんな方法をやりたがる、会社の全体像を考えてその方法論に筋が通ったチャレンジはありかなって。

岩田
そのものの正しいあり方っていうのがあるだろってことですよね。
それで思ったんですけど、古木に、江戸時代の子どもの落書きの跡とか残ってないんですかね?
せっかくの古木を白く塗っちゃうっていう話とは違うんだけど、子どもは平気で傷つけたり塗ったりするなあと。

吉田
背を図るために刻みが入ってたりとかは。

敬介
昔の子どもって、平気で落書きしたのかな。

岩田
うーん。石とかでやらないのかな。

敬介
江戸時代の子どもの落書きです、って俺、見たことないな。やんないのかな。

吉田
やらないわけないよ。

岩田
僕もやらないわけないように思うんですよね。
山岸さんは?

山岸利香(以下、山岸)
文字とかは見たことありますけどね。

敬介
子どもが描いた?

山岸
いや、子どもが描いたものではないです。

敬介
それは大工さんの棟梁の名前とかね。

山岸利香

デザイナーの図面


賢太
山岸がですね、今回、千葉の柏でけっこうたいそうな物件をですね、1人で牛耳ってやってまして…

山岸
いや、やってないです。
さきほど賢太さんが仰ったように、「新しい風を」っていう意味でも、わたしとしては「こうやりたい」っていう思いがあったんですけど。古来のやり方だったり、メンテナンスとかのことも考えて、古材アーティストである棟梁だったり上の知識のある方たちに「こうしたほうがいいよ」っていうこと言われまして。そこでいろいろ葛藤があったりして、まあ難しいなと思うことはあるんですけど、それが面白いなと今思ってたり。

岩田
何をやりたかったんですか?

山岸
(笑)

賢太
まあ細かいことは

山岸
まあまあ(笑)

賢太
そこで葛藤があって、ただ、棟梁のような方たちはいろいろな問題が起こることも予見できるんですよ。だから、こうやりたいってことが若い力なのかわかんないですけど、こうしたかったんだけどそれができない。そういうのが何箇所かあった。
もしデザイナーの図面っていうのが絶対だとしたら、それはやらないといけないんですが、設計から施工まで全体でやるところでは、そういうふうにはなっていかない。なかなかそういうところまでデザインで突っ込めない。僕らがやろうとしているデザインが絶対だと思えていたら突っ込めるのだけど、僕はそこまでデザインが絶対だとは思わないんですね。
その点、難波さんは、ほんと天才だと思ってます(笑)

難波
なんで俺(笑)

これで古木なデザイナーズ会議はおしまいです。
お読みいただきありがとうございました。

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