地元に愛される祖師ヶ谷大蔵の古木な店「チャイニーズレストラン欣喜」《後編》

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地元に愛される祖師ヶ谷大蔵の古木な店「チャイニーズレストラン欣喜」《後編》

祖師ヶ谷大蔵の古木なお店「チャイニーズレストラン欣喜(きんき)」は、この6月で6周年。後編では欣喜の”これまで”と”これから”をご紹介します。

人通りの少ない立地で人気店になるまでの道のり

街の人に認知され愛されるからこそ、客足が途絶えない人気店としての今があります。しかし、そこに至るまでの道のりは平坦なものではありませんでした。

 物件探しでは、青木さんの奥様の地元・祖師ヶ谷大蔵と、青木さんが当時働いていたお店のある都立大学駅周辺を見てまわったそう。できれば、青木さんを知るお客さんが多い都立大学駅が希望だったそうですが、なかなか物件が見つからず。現在の物件が見つかったときには、既に9ヶ月が経っていました。そのため、青木さんについて来る予定だった人材も、開業が延びたことでタイミングが合わず、他店に行かざるを得なくなってしまったそうです。

メインの商店街の脇の路地裏も、欣喜のあるまるよし横丁の入口。ひっそりと広がる空間です。

「だから、オープンのために急いで人を集めましたが、長続きはしませんでした。結局は、前の店で僕の下についてくれていた料理人が来てくれて、5年半も続けてくれています。他にも長く続けてくれるスタッフに恵まれましたが、最初は大変でした」

 開業から6年、未だに地元で知らない人がいるこのお店。開業初年度、世田谷区が発行する冊子に掲載され、その後『二子玉川経済新聞』にニューオープンのお店としても掲載されました。そのお陰で、日本テレビ『ぶらり途中下車の旅』に取り上げられ、段々と認知されていくための流れが生まれたそうです。

祖師ヶ谷大蔵商店街近くに「チャイニーズレストラン 欣喜」がオープンして2カ月がたった。

青木流・お客さんとの関わり方

地元の人から愛される理由について、青木さんは語ります。

「どこで仕事していても変わらないことだとは思いますが、お客さんの立場になって考える。それが基本だと思っています」

 まず「この皿は、喜んでいただける料理になっているのか?」。それを考えるために一呼吸置くと、盛り付けはより丁寧になり、少しソースが跳ねていたりすれば、きちんと拭いてからお出しするそうです。

 そして「この対応は、喜んでいただけるものなのか?」。例えば、厨房の近くの席であれば、賑やかな時には気にならない音だとしても、静かな時には厨房での何気ない音がうるさく聞こえるかも知れません。厨房内で起こることであっても、それがホールへどのように影響するかまでを気遣う。

とある日の、本日の前菜の盛り合わせ。一品ずつ丁寧にご説明いただける、大切に食べたくなるおもてなしです。

さらに極めつけは「お客さんとのリアルなコミュニケーション」。青木さん自らがホールに出て、お客さんとコミュニケーションを取ることで、そのお客さんの状態を確認します。仮に風邪気味のようであれば、体調に合わせて刺激の少ない料理を勧めたり、時には味付け自体を「オーダーメイド」。そういった細やかな気配りができるのも、誠実なコミュニケーションが徹底されているからこそ。

 料理、接客、サービス、スタッフ全員で「欣喜の精神」を実践することが、お客さんの『また来たい』に繋がります。相手の立場から考える。これは職種を問わず、非常に大切な考え方ですね。

“繋がる”ことで祖師ヶ谷大蔵を盛り上げる! フリーペーパー『Gayagaya散歩』のプロデュース

そしてお店では、定休日に料理教室も開催。なんと受講者数はこれまでに100人を超えるそう。

「料理教室を絶えずやり続けるのは、これがコミュニケーションの場であり、お店を知ってもらう機会にもなるからなんです。色々な方と話せる機会なので、とても楽しみにしています。それから、1品作るのにとても手間がかかるということも知ってもらえたら、お店に来て食べてもらうことの価値も感じてもらえるかな、とか。とにかく、そういうことが次に繋がるんですね」

あっという間に満員御礼になる料理教室。本格中華を家で作れるようになると人気の教室です。それと同時にお店の一品にかかる手間ひまを知る機会にもなるといいます。

パネルの横には写真の解説もつき、ギャラリー的な機能も果たしています。

 “繋がる”ことで、色々な可能性が拓ける。そんな青木さんのポリシーは、店内の至るところに現れています。お店に飾られている写真は、青木さんのご友人の写真家・関誉詩晴さんのもの。季節によって変わる写真が店内を彩り、それが同時に、アートと触れる機会にもなる。

お店のショップカードのイラストレーター・久保田美穂さんの紹介が、お手洗いの壁面に貼られています。

欣喜のショップカードのイラストレーター、久保田美穂さんのご紹介も。

そんな繋がりが祖師ヶ谷の街へと広がり、ご友人と共に祖師ヶ谷大蔵の街を盛り上げるフリーペーパー『Gayagaya散歩』のプロデュースに至りました。祖師ヶ谷大蔵の飲食店、ネイルサロン、整体院など、様々なジャンルの情報が載る『Gayagaya散歩』は、新聞の折り込みとして配布されています。街を盛り上げていきたいという思いが、一つの形になりました。

料理教室、そして新しく始まったフリーペーパー『Gayagaya散歩』。青木さんは町おこしの仕掛け人の一人として、活躍の幅を広げています。

「自分の目の届く範囲。それを大事にしています。自分がしっかり、ドーンといる店を作りました。だからこそ難しいところもありますが、それでもできることをする」

 街に根付き、愛され、枝葉を広げて進んでいく7年目。地元に愛されるお店のこれからが、とても楽しみになりました。

koboku通信を手にとってくださる青木さん。いろんなことに興味を示し、思いついたことをアドバイスしてくれたり。そんな頼りになる町おこしの仕掛け人の一人です。

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