WAKUWAKUやまのうち訪問 ~信州 湯田中温泉 街巡り~

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WAKUWAKUやまのうち訪問 ~信州 湯田中温泉 街巡り~

いま全国各地で古民家等歴史的資源を活用し、地域活性化させようという取り組みが始まっています。そして国もそうした取り組みを全面的に後押しています。  今回はそうした取り組みのひとつ、長野県北東部の山ノ内町で行われている取り組み事例をご紹介します。

長野県山ノ内町は、長野県の北東に位置する町です。
町内には猿が温泉に入ることで世界中に有名な地獄谷野猿公苑、多くのスキー場や温泉地がある観光地として有名ですが、近年は観光客が減少し街もさびれていました。
こうした中、国からの融資を活用し、後継者不在の休廃業旅館や空き店舗のリノベーション、訪日外国人向けツアー事業などの温泉街再生と活性化の取り組みが注目を浴びています。
今、全国的にも注目されている古民家再生事業の取り組みをみようと、東條が訪問してきました。

WAKUWAKUやまのうちへ

湯田中駅から延びるメインストリートのかえで通り

 長野市から車を走らせること約40分、奥に志賀高原の高い峰々が迫るなだらかな丘陵地に湯田中の温泉街が広がっています。
 地元長野電鉄の終点である湯田中駅からかえで通りと呼ばれるメインストリートがあり、最盛期には土産物店だけでも10軒、そこに飲食店や旅館などがひしめき合う賑やかな通りであったそうです。そんな繁栄は過去のもの、現在は空き店舗や空き旅館が目立つようになってしまっています。そこが今回の活性化事業の舞台となっている場所です。
 当日、案内してくれてのは「WAKUWAKUやまのうち」監査役中尾大介さんです。彼は地元八十二銀行の社員でありますが、勤務はこちらに置き、月一回本社に顔を出す程度とのこと。
 お会いした時の中尾さんは、スエットにTシャツ・ジャンパーという余りにラフな服装に担当者と思えず一度は通り過ぎてしまったほど地元に溶け込んでおりました。
ご挨拶も程々に早速、運営会社「WAKUWAKUやまのうち」の5つの拠点を案内頂きました。

AIBIYA

ここは、ファンドから得た資金で地元建設会社にリノベーション、WAKUWAKUやまのうちが直営する施設です。
ここでは宿泊事業部長でもある西澤さんが案内してくれました。
彼は海外のホステルで約3年働きながら12カ国21都市のホステルを泊まり歩き、ホステルについて知り抜いた人物です。
そんな彼がこの地元でWAKUWAKUやまのうちに出会い、廃業した築60年余りの小規模旅館をリノベーションして開業しました。
無垢の木の肌を活かしたつくりなので、全体的に自然なナチュラルな雰囲気です。
運営は西澤オーナー夫婦が行っています。
彼がこのホステルを案内していく中で印象的な言葉が、旅行者がここでホントにリラックスして寛いで過ごして欲しい、そんな空間を提供したい。そのためにはどうしたら良いかを考えて作りましたというもの。
平均4泊する海外旅行者が大部分を占めるこのホステルにおいて、気兼ねなく自分の家で休めるようにするには畳に布団ではなくベッドが良い、しかもローベッド。共有空間に出てきて交流して欲しい部屋はシンプル寝るだけの空間にした。宿にはシャワー室のみとし、他旅館のお風呂を楽しんでもらうように提携して斡旋している。
朝はパンとシリアルと飲み物の最低限の朝食を提供し、調理スペースもあるのでそこで自由に料理もできるー。お土産してもらえるように地元作家の工芸品や雑貨を販売するクラフトショップも併設。実店舗を持たない作家さんたちの貴重な場所ともなっています。
【店舗情報】
店舗名    : AIBIYA(アイビヤ)
所在地    : 〒381-0401 長野県下高井郡山ノ内町大字平穏3032
予約・詳細情報: http://hostelaibiya.com/
電話: 0269-38-0926

説明するオーナーの西澤さん(写真中央)。
ここは共用のキッチンスペース。広々して必要な調理器具も揃っています。

部屋内部の様子。ベッド、読書灯の他備品は最小限にし、TV鑑賞等は共用部分に来てもらう工夫をしています。

ZENYA

AIBIYAに隣接するこの施設。こちらもホステルですが、形式は違います。
ファンドから得た資金でリノベーションは一緒ですが、運営は個人の方が行い、WAKUWAKUやまのうちは毎月賃料に分割した改修費をプラスしたものを収入を得ている形式です。
入り口に甲冑と刀がお出迎え。外国人が喜びそうな演出です。
そしてフロントと一体化して目に飛び込むのがバーカウンターを備えた共有空間。古材柱と二階台の茶褐色の色合いと暗めの照明、アクセントとなる新設した赤や白の色合いの壁面。カッコイイ。。。スタイリッシュ、クールジャパン!って言うかも。海外のパブに迷い込んだ感じ。薪ストーブもあるし。可動本棚も面白い。
その奥には日本庭園を眺めながらの寛ぎ空間も。これは以前の旅館時代の名残とのこと。お風呂だった場所はトレーニングルームにしたり、海外旅行者の需要に応えた造りになっています。
2階からは宿泊スペース。こちらはホステルといえば2段ベッドというイメージそのままにズラリと並んでおります。

ZEN Hostel
〒381-0401
長野県山ノ内町平穏3031
詳細情報;http://zenhostel.net/
Tel:0269-38-0755

玄関入るとまず目に飛び込む甲冑と宿名である禅の文字。

手前がフロント、奥がカウンター。

華灯りの宿 加命の湯

こちらもZENYAと同様賃料収入の形式のお宿。明治期に作られた温泉宿で、前オーナーが開店休業状態であったものをWAKUWAKUやまのうちが取得装したもの。
運営は地元湯田中温泉の老舗旅館であるよろずやの若手スタッフが行っております。
玄関を入ってまず正面のガラス戸向こうの日本庭園がお出迎え。フロントと庭園が一体化した空間となっており開放感があって癒やされます。
夜はライトアップして幻想的な雰囲気になるそうです。
店名にもあるように、和紙を使った照明を設けるなど、柔らかい灯りに特色を出そうとしています。
部屋が六つだけと小じんまりとした宿ですので、団体客も来ないのでのんびりと過ごすことができそうです。
よろずやさんが正統派温泉旅館である一方、こちらは新しい宿泊形態を提案しています。
例えば、選べる夕食。旅館では料理は提供せず外に出て食べてもらうコンセプト。『よろづや』の和食会席、またはイタリアンとフレンチのレストランの3つから選択します。
こちらも旅館内に温泉はあるものの、他旅館の温泉にも入れるようになっています。


名称 華灯りの宿 加命の湯
住所 〒381-0401 山ノ内町平穏3174
TEL:0269-33-1010
FAX:0269-33-1011

中庭の日本庭園を取り囲むように建物が建つ。

ビアバー&レストランHAKKO

昔精肉店だった建物をリノベーションして生まれたこのお店。
2階の床を取り払ったため、開放感たっぷりの空間に生まれ変わりました。
取り払った床材は他旅館で眠っていた欄間と共に壁面装飾に再活用されています。
このお店のオーナーは長野市権堂で店舗経営されているご夫婦が2号店として経営中です。
このお店の特徴は、地元食材と味噌・酒・麹といった8つの発酵食品を使った料理です。
店名も発酵食品からがHAKKOと命名されたとか。
昼食時にお邪魔しましたところ、地元野菜や肉を用いたランチプレートが4種類。
大きな味噌汁椀にサラダ小皿も付いて満足な一皿です。
夜は地ビールやワイン等を楽しめるバーとして機能し、温泉客の方々が夜そぞろ歩きしてチョットお酒を楽しむ、そんな夜の需要に応えようとしています。

住  所 山ノ内町大字平穏3010
電話番号 0269-38-8500
営業時間 11時~15時LO、17時~23時LO
定休日 月曜
駐車場 あり (4台)

店内の様子。2階床板取り外して開放的な店内。余った床板や欄間を壁面装飾材として再利用。

CHAMISE やまのうちカフェ

遠方から来た観光客の方々が、目的地となるやまのうちに来てまずホッと一息いれながら次の旅のプランを練るそんなカフェ兼観光案内所的な場です。
現在7月7日リニューアルオープンに向けて改修中でした。
リンゴの木箱を再利用した壁面。ウッディな温かみある空間となっております。
ここでは副社長である大里さんが、林檎ジュース松屋銀座店で今年のお中元で扱ってもらうことになった「やまのうちりんご」という名の林檎ジュースの梱包作業中でした。
地元農家栽培の無添加ジュースを雪室で貯蔵したことで円やかな甘さししっかりした甘みがありながら、後口がさわやかで、飲んだ後の満足感が強いのが特長とのこと。流石に試飲できませんでしたが。美味しい感は伝わってきます。
可愛らしいラベルデザインも地元作家さんが手がけています。

住  所 長野県下高井郡山ノ内町平穏2997-4
電話番号 0269-38-8989
営業時間 11:30〜18:30

改装中の店内。リンゴ木箱で貼られた壁面。説明する中尾さん。

今日に至るまで、そして取り組み

 現在5つの拠点を抱えるまでに成長を遂げましたが、ここに至るまでの苦労は大変だったとのこと。とくに最初の一歩、意欲あるヒトをどうしたら確保できるのかが重要なポイントのようです。
 地域活性化に地元金融機関の八十二銀行が音頭を取って、地元の方々と話し合いを続けておりました。しかし具体的な案も出ず、会合への熱量も減り、一人また一人と参加者も減るなど、手詰まり感を迎えていました。
 そんな時、ある地元出身の若者が湯田中の金融機関を訪ねてきました。生まれ育ったここ山ノ内町にホステルを構えたいという意欲を持った若者で、この方がいまのAIBIYAの高橋さん。この出会いが無ければ今日の姿は無かったといえる程の重要なキッカケであったそうです。
それまでの地元有力者の会議では意見があっても行動が伴わず堂々巡りだったのが、実際に動ける若者を見つけたことで歯車が動き出したのです。
 しかもこの地元出身の若者の仲間(ネットワーク)を通じて起業したいという意欲ある人が何人も見つけることができたという幸運にも恵まれ、拠点が増えていきました。

 現在、これら拠点ではつぎのようなことを試みています。
・ホステルには温泉を作らず外に出て他旅館の温泉に入ってもらう
・夕食を提供せずに他飲食店を利用してもらう
・たまり場となるカフェを設置した
・夜の需要に答えるお店もつくった
単に施設内に囲い込むのではなく、浴衣姿で通りを歩き回ってもらう、そこでまた新たな出会いや刺激、賑わいが生まれていくー。そうした仕掛けを幾つもつくっていました。
また、定期的なイベントも重要です。星空ナイトツアー、

 しかし、担当者は言います。まだこの通りに活気が戻ったと感じるには程遠い、と。
6月という閑散期の平日昼間ということもありますが、確かに通りには人影は殆ど無い状態です。
でもこの取り組みは確実に大きく成長を遂げていくはずです。今回お話を聞く中で、これだけのキラキラした希望を持つ人々と接することができたので。
 WAKUWAKUやまのうち訪問ルポはこれでおしまいです。
 お読みいただきありがとうございました。

宿泊事業部長の西澤さん。

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