巨樹ツアー 第9回「青渭神社の大ケヤキ、老木にハートを見る」

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巨樹ツアー 第9回「青渭神社の大ケヤキ、老木にハートを見る」

水辺近くの場所は聖地になりやすい。なぜならそこは、あっちの世界とこっちの世界の境界だから。そんな典型的ともいえる聖地の構造を持っているのが、東京は調布、深大寺近くにある青渭(あおい)神社だ。近代化の流れで今となっては水辺も見られなくなった調布だが、その記憶を持つ老木が、まだここにいたのである…

植物の力


深大寺のだるま市を見に行く途中、こんな木を見つけました。

フェンスを突き破ってます。
金魚は金魚鉢の大きさに合わせて自分の体の大きさを決めていくそうですが、植物は自分を囲い込んでいる鉢をぶち破り、さらに己を拡張していく生物です。

しかしこの大きさの木の樹齢を思うと、先にこの木があり、フェンスが後だと思うのですが、これはどう見てもフェンスが先で、木が後からぶち破っているな。。。

路肩ブロックもコールタールの道路も、わけなく弾き出されてます。
人間が作り上げたものなんて、結局はこんなもんなんでしょうね。
人類がこの世界の頂点に君臨したことなど一度もなく、この世界を支配してきたのは昔も今も植物であり、かつての恐竜さえ植物の下でつましく暮らしてきた脆弱な生き物にすぎない。
この世界は、植物の圧倒的優位の歴史なのです。

そしてこの巨樹ツアーはといえば、そんな最強生物である植物をリスペクトして回る、人間という脆弱な生き物による巡礼ツアーなのです。

青渭神社の大ケヤキ


今日訪ねた巨樹は、その木のある場所から200mほど道を東へ下ったところ、青渭神社にあります。
こちらです。

ものすごく大きな介護杖をしてます。

さっきの木もそうでしたが、これもケヤキです。
このあたりは昔、防風林としてケヤキがよく植えられていたそうです。

別のアングルから見るとすごいことになってます。

これはもう杖を外したらお終いでしょう。

ちなみに後ろを振り向くと、同じ方向にもっとつんのめってるやつがいました。

さきほどのフェンスを突き破ってたやつもそうですが、人間の目には見えない、何かそちらへ向かう理由があるのでしょうか。

水と陸の境


このあたりは縄文中期の遺跡、打製石器の製造所跡があり、武蔵野文化発祥の地といわれています。
伝えによると、3000年から4000年前の先住民が水を求めてこの地に居住し、ここに祠をつくって水神様を祀ったということです。
青渭神社の「青渭」は水の打ち寄せる様を意味し、この一帯が水ぎわの地だったことが推測できます。
水と陸の境は「こっちの世界」と「あっちの世界」の境でもあるため、聖地になりやすい場所です。
ちなみに江戸時代、1829年に発刊された『江戸名所図会』にも「社前槻の老樹あり、数百余霜を経たるものなり」と、この青渭神社のケヤキが紹介されています。

この絵を見ても、今の東京都立農業高神代農場のあたりは大きな池だったことがわかります。

ハート型のウロ


人の背より一段高い場所に大きなウロがあるのですが、これが素晴らしいです。

縁結びのビジネスでもなりそうなくらい、綺麗なハート型になっています。

主幹の頂上部は切られてしまっています。

すぐ手前が三鷹通りで車の往来が激しいため、おそらくリスクを考えて処理をしたのかもしれません。

あらためて全容を。

リスペクト!

データ:青渭神社の大ケヤキ


データ:青渭神社の大ケヤキ

巨樹度:⭐️⭐️⭐️
調布市天然記念物 (昭和47年指定)
幹周:5.5m
樹高:34m
樹齢:推定 500~700年
住所:〒182-0017 東京都調布市深大寺元町5-17-10
アクセス:京王線調布駅からバスで10分

巨樹ツアーのオフィシャルマップもあります。
みんなも自分で見つけた巨樹を、MAPに投稿してみてね。

この記事のライター WRITER

岩田和憲

グラフィックデザイナー。言葉と写真もデザインも同じものとして扱っています。元新聞記者。元カメラマン。岐阜県出身。 https://www.iwata-design.com/