巨樹ツアー 第8回「松山諏訪神社の大クス、無人の初詣」

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巨樹ツアー 第8回「松山諏訪神社の大クス、無人の初詣」

樹齢1000年。今も樹勢旺盛なる現役。しかもまるで損傷が見られぬ。この男前の巨樹を見むと、正月三が日の最終日、明治神宮も熱田神宮も蔑ろにし、わたくし、南濃松山の諏訪神社へ詣でるなり。

参道はなんと、川。


正月、実家(岐阜)に帰省したので、近くの巨樹を見に行ってきました。
近くのと行っても車で40分くらいかかるところです。
三重県境にほど近い海津市南濃町にその巨樹はあります。

朝の7時前。
養老山脈の山裾。
オレンジ色の朝日に照らされ、山頂はうっすら雪化粧しています。
ここに、岐阜県最大といわれるクスの木があります。

目的地まで、石塀のちょっと変わった道が続きます。

「南濃四季の散策コース」という穏やかな名前がついてますが、土石流の注意喚起区域で、雨が大量に降ると道が川に変わります。

人や車はこの鉄柵に突き当たると右折(向かって左へ)となりますが、道が川に変わると、濁流はそのまま鉄柵の下をくぐり、手前にある山除川に流れ込んでいく仕組みになっています。

両脇はみかん畑になっています。
あまり知られてないですがこのあたりはみかんの産地で、昔ながらの酸味を残した趣のあるみかんが採れます。

巨樹、登場。


砂防道路のどん詰まりまで歩くと、鳥居が現れます。

正月三が日だというのに、この静かな佇まい。
誰もいないです。

そろそろ、こういう静かな地方の村社に初詣をする「村社ブーム」がくるきがします。

境内からは濃尾平野を一望しながら、名古屋市のビル群を奥に見ることができます。

小さな神社ですが、楼門がありました。
さらに、

楼門の中には、神像の代わりにめちゃくちゃかっこいい三輪車が安置されています。

そして拝殿の向こう、

一本だけ南国の植物みたいにウネウネしてるのがあります。

拝殿を回り込み、本殿へ。
この本殿の背後に、巨樹があります。

巨樹に近づいてみます。

なぜか途端に曇天となり、風が荒れ、吹雪いてきました。

木が太すぎるからか、注連縄が紐みたいに見えます。

御神体としての巨樹

それにしても、本殿のぴったり真後ろです。

説明板を読むと、どうもこの巨樹自体がこの神社の御神体ではないか、ということです。
推定樹齢1,000年なので、室町時代にはすでに御神木としての風格は十分だったと推測されます。

木が生える
 ↓ 
成長し、インディペンデント型の巨樹となる。
 ↓ 
村人の崇拝が始まる。
 ↓ 
神社がつくられる。
 ↓ 
ホーリー型巨樹として守られる。


おそらくこういう流れじゃないかと思います。

ちなみにこれくらいのスケールの巨樹で柵もなく、根元まで人が近づける木は今やなかなかないので、そういう意味でも貴重です。

そうこうしているとまた急に晴れ、今度は明るい光が射してきました。

伊吹山で負傷したヤマトタケルノミコトは南下し三重の鈴鹿山麓で息を引き取りますが、養老山脈はちょうどその途上にあたります。このあたりは、そうした神話的な想像をさせる地形と天候なのかもしれません。
冬は伊吹山から養老山脈へとつながる山系からの吹きおろしが強い地区で、その寒風を利用してたくあんを作るために方々で大根を干す景色なんかも見られます。

あらためて全容を。

リスペクト!

データ:松山諏訪神社の大クス


巨樹度:⭐️⭐️⭐️⭐️
岐阜県指定天然記念物 (昭和32年指定)
幹周:8.7m
樹高:20m
樹齢:1,000年
住所:〒503-0535 岐阜県海津市南濃町松山1833-1
アクセス:養老鉄道「美濃松山駅」から徒歩約20分。東名阪道「桑名I.C.」から10km。

この記事のライター WRITER

岩田和憲

グラフィックデザイナー。言葉と写真もデザインも同じものとして扱っています。元新聞記者。元カメラマン。岐阜県出身。 https://www.iwata-design.com/