サンクゼールの久世さんに聞く、ブランドの育て方。その3

インタビュー
公開
3240 Views

サンクゼールの久世さんに聞く、ブランドの育て方。その3

40年ほど前、家庭で作ったジャムから始まったジャム屋さんが、どうやってここまで成長してきたのか? 代表取締役専務の久世良太さんに聞いてきました。第3回は、この事業がずっと続くわけではないという危機感と、変化することのワクワク感のお話です。

ブランドの育て方。その3

久世 良太(くぜ りょうた)株式会社サンクゼール代表取締役専務。父は同社社長の久世良三。 1977年、長野市生まれ。2002年、電気通信大学大学院卒業。セイコーエプソン勤務を経て05年、株式会社斑尾高原農場(現・株式会社サンクゼール)に入社。12年、代表取締役専務に就任。

ブランド構築の裏にあるインフラ構築の苦労(続き)


久世 良太(以下、久世)
今ね、9人いるんですよ、SEが。

岩田 和憲(以下、岩田)
SEだけで9人もいるんですか。

久世
いるんですよ。
彼らに頑張ってもらって、ピッキングのシステムを作ったんです。
ピッキングって、オペレーションの大事なところじゃないですか。
そこが回らないと、店舗がいくらカッコよくても絶対続けられないわけですよね。
あとは、1店舗だけだとこのモデルは成り立たない。なぜならば、各2,500アイテムを仕入れるので最低の発注ロットっていうのがあるじゃないですか。
そうなると、最低でも5店舗ぐらいはないと。

山上 浩明(以下、山上)
ちなみに今、久世福商店は何店舗あるんですか?

久世
今、70店舗です。

山上
すごいですよね。

久世
物流の構築がキモだったんですよね。
コンセプトやブランドとしての作り込みと、それを支えるオペレーショナルなビジネスインフラっていうのを、両方やっていくっていうのが僕の仕事なので(笑)

岩田
そうしたもろもろを久世さん含めた3人でやられたんですか?

久世
はじめはそうなんですけど、それから新入社員を入れたりとか、

岩田
最終的には、今では、

久世
今は15人ぐらいいるんじゃないかな。

今の事業がずっと続くワケがないという危機感


山上
転機っていうものがあるとして、久世福商店をつくろうって思う。そのタイミングに空き工場が見つかったり、イオンさんから話がきたり。そういう呼び込みってあると思うんですけど。
転機を迎えてる、そういう感触的なことがあるわけですよね。

久世
まずはやっぱり今の事業がずっと続くわけないっていう強烈な危機感ですね。社長もわたしもそこをすごく思ってるので。
というのはわたしたち、もともと斑尾高原でペンションをやってたわけですけど、昔って、スキーをやりに、めちゃめちゃお客さん来てたんですよ。今、スキー客って3分の1に減っちゃってるじゃないですか。「あれがずっと続くはずがない」って、どこかで冷静な目で見ている自分っていうのがいて。
そのあとも白馬とか志賀高原、いろんなところの土産屋さんにジャムを卸して、それを全国に卸し始めていったわけですけど、卸だけだと価格決定権もないし、小売店さんが「ダメだ」って言ったらもうダメじゃないですか。他者に運命を牛耳られているような状況っていうのは、自分たちに誇りをもってできないなあっていうところもあって。

それで直営店を出して自分たちの売り場を作っていこうっていうことで、サンクゼールっていうブランドでまず軽井沢に一号店を出して。それからまあ、30店舗(※退店等を含めると60店舗)ぐらいやらせてもらったんですけど、それでも「サンクゼールっていうブランドだけでは危ないんじゃないの?」っていう危機感ですよね。やっぱり販路って分散化させていかないと怖くてしょうがないっていうのがあるんです。
それで第二のブランドとして、逆方向の和食にフォーカスした久世福商店をつくったんですけど。
10年ごとにそういう節目があって。
やっぱり自分たち自身を変えなきゃいけないっていう思いですね。

アメリカに会社をつくる


山上
次の新しいブランドっていうのがあるんでしょうか?

久世
今ですね、ザ・グロッサリー&ワインっていうブランドを3店舗やってまして。
久世福商店が日本全国の美味しいものだとしたら、ザ・グロッサリー&ワインっていうのは「世界にバイヤーが行って美味しいものを買い付けてきました」っていうコンセプトのお店です。
それを今ぜひ広げていきたいなって。

「ザ・グロッサリー&ワイン」の食品群 ©株式会社サンクゼール

岩田
そのザ・グロッサリー&ワインっていうのは、どういう文脈の中で今これをやるべきだって思われたんですか?

久世
向こうの農作物って、ほんと美味しいんですよ。ブルーベリーもそうですしイチゴとかも。うちのジャムの原料としての全部が揃ってますね。オーガニックも手に入るんです。
実は去年、わたしたちはアメリカのオレゴン州に会社を作りまして。オレゴンの工場を買収したんですね。今、長野で作ってる商品の半分を向こうで作っていきたいなって思っていて。
いわゆる6次産業化ってよくいうじゃないですか? それをもう世界レベルに拡張したいなって。
そのためにはまず原料を確保したい、そういう意味もあって会社を作ったんですけど。
そうすると、コンテナが毎月何台もくるような規模で物流が動くんですよ。そこに長野で作ってる商品の半分を入れ込んじゃったらいいんじゃないのって。
うちの強みを最大限活かせられる物流もできるので、その結果をお客様に還元したらいいんじゃないかなあって思ってるんですね。

山上
すごいですね。ワールドワイドな展開にも自然な広がりを感じます。

会社としての夢を持つ


岩田
久世さんは今、どんな夢を持たれてます?

久世
まずサンクゼールっていう会社が「誠実な仕事してるよね」っていうことを浸透できるようにしていきたいなっていうふうに思ってて。「大きい会社だね」ではなくて、「あそこに行ったらハズレがないよね」とか「やっぱ旨いわ」って言ってもらえるようなブランドになりたいですね。
あと、夢を見続けていたい。会社として夢を必ず持っていたい。みんなの力で実現していく方向に動いていこうよ、そういったある意味で青臭い、大人になりきれない会社、ワクワクする気持ちを大切にする会社でありたいなって思っていますね。

岩田
ワクワクっていうのは、さっきの危機感を持ってるっていう話と裏表の話ですね。

久世
そうだと思います。
自分たちが感動するもの、これはいいなって思うことをカタチにできるってことが、家族の食卓を笑顔にすると思ってますし、そういうことをリアルなものとして提供できる会社でありたいなって思ってますね。

岩田
今日はありがとうございました。


これでサンクゼール、久世良太さんとのお話はおしまいです。
お読みいただきありがとうございました。


取材:岩田 和憲、山上 浩明
構成:岩田 和憲
写真:岩田 和憲

この記事のライター WRITER