岸家 Modern Ryokan kishi-ke が考えるこれからの宿:後編
岸家 Modern Ryokan kishi-ke が考えるこれからの宿:後編
一日一組限定の体験型旅館、岸家(Modern Ryokan kishi-ke)。2019年の5月にオープンして以来、「VOGUE PARIS」「Telegraph」等々、海外でのメディアにも盛んに取り上げられ、“今の宿のあり方”として世界的な注目を集めています。
後編では、たった一夜の宿泊体験がさまざまなプロフェッショナルな学びへと繋がる、そのための具体的なアイデアと実践、そしてこれからの動き方について語られます。
目次
精進料理と香り
岸:それで、「精進料理と香り」っていう体験も今やろうとしてまして。
岩田:精進料理と香り?
岸:香りにフォーカスして、精進料理の体験をこちらでしていただく。
さっきのマクドナルドじゃないですけど、普段自分が何を食べてるかとかもよくわかっていない。例えば今、蕪が美味しいとか白菜が美味しいとかって、主婦や料理が好きな方だったら気づくと思うんですけど、都会にいて普通に働いてると、そういうことはもうわからないと思うんですよ。それを、香りを通して体験する。例えば、基本のベースは全部一緒で、色と香料だけが違うカキ氷のシロップのように、一説によると、味覚の決定要因の95%は香りなんですよ。その香りの体験を、精進料理を通してしていただくっていうこと。それを今年からやろうかと、
岩田:それはいつもの精進料理を出し、その香りを今回は意識してみようっていう?
岸:そうです。
このあいだNOMAのドキュメンタリーを見たんですけど
岩田:北欧のレストランの?
岸:そうです。そのNOMAにレネさんっていうシェフがいて、日本で期間限定のレストランをオープンしたんですけど、そのときのドキュメンタリー見てたら、めちゃくちゃフィールドワークしてるんですよ。日本中の木とかマッシュルームとか果物とか、なんだか生のまま、けっこう食べるんです。たぶん土とかも場所によっては食べてると思うんですけど、そういうことをすごくされてて。「この木、枝の匂いが違う」とか言ってるんですよ。同じ木でも匂いが違うとか。
で、野口さん(*)と僕ら、コンサルティングで月一回、ワークショップというか授業を受けてるんですけど、そのときに香りを取るっていうワークショップを僕らがやったことがあって。
*野口さん … 千葉県木更津市で飲食業を展開している、株式会社ごはんクリエイトの野口利一さんと麻衣さん夫妻(参照:木更津で胎動する食文化と職人の未来) |
例えばグラスの中に果物入れたり野菜入れたりして密閉しておいて、香りを嗅ぐ。青色のミカンと赤色のミカンでは匂いも何となく違うだろうなと思ってはいるけど、実際やってみるとこれが全然違う。精進料理ってまさにこれだなって思って。
精進料理って、肉も魚もバターも使ってないんで、味がやっぱり淡いんですよ。本当に微妙な差異でできている料理なので、レネさんのような世界の超一流のシェフたちって、こういう次元のことを料理とか食材に見てるんだろうなって、僕は直感したんです。
そこを一般というか、お客様にも体験してほしいなって。
講師である料理人の野口さんが見えてる世界と、一般的に食事をされてる人が見てる世界とは違いがあると思うんです。それをこう、プロの方が見えているところまで持っていってみたいなって。
僕、精進料理教室っていろいろ見たんですけど、例えば調理教室。調理教室は作るだけなんです。それも楽しいんですけど、僕はもう少し深く突っ込みたいなと思って、香りの体験はすごく面白いだろうなと思って。
岩田:香りっていうテーマを見出したのは岸さんなんですね?
岸:僕ですね。
岸 仁美(以下、仁美):普通のことなんですけど、意外と「ぜんぜん意識してない食事をしてる」っていうことがすごいわかりやすい体験方法だなあと思って。
岸:この話は料理だけじゃなくて、例えば写真も同じだと思うんです。普通の人はなんとなく綺麗だと思って写真を見てたりするけど、画像の処理とか光の入れ方って、たぶん、あるんだと思うんです。
岩田:そうですね。
岸:それって、そこがわかるとぜんぜん違う世界になってくると思うんです。
けっこうエグゼクティブの方、会社を経営しているリーダー的な方って旺盛な知識欲があって、趣味でやってるけどその分野でプロ並みの腕前っていう人も多いんですよ。
そういう方たちって、また自分とは違う別ジャンルのプロに繋がるっていうことが好きだろうなと思うんです。
それで、今年からプレスリリース打ってやりだそうとしてるんです。岸家には「知足パッケージ」っていうのがあって、そのパッケージを三弾構成で考えてて。一弾目はヨガのような、体をちょっとリラックスさせる体験。で、二弾目で精進料理の香りの体験をして、表側というか、目の前にあるもの、世の中にあるものを見る。そのあと三弾目に茶道の体験をしていただいて、裏側も気にかけていただく。そうやって何回も体験することで、普段の生活にも落とし込めるレベルでの知足の体験ができるんじゃないかなと思ってて。
でもこういうことって、たぶん昔の日本人って、潜在的にやってるんですよね。
岩田:生活とか人の営みっていうことを、今より細かく知ってたでしょうね。
岸:それをちょっと現代流にしてるっていうのが、今僕らが考えてる体験の流れですね。
こういうことをしたいなとずっと思ってきて、結局、それが「日本を住まう」ってことなんじゃないかなって。
僕だけがこういうことを言ってると頭でっかちになるので、そこに彼女がデザイナーとして「プラス・ファン」っていうテーマをつけてくれたんです。結局、「知足です。日本文化はこうです」って言っても楽しくないとダメだから。
「プラス・ファン」のデザイン
岩田:仁美さんのデザインの力っていうと、例えばどんなところに?
仁美:精進料理はわたしが作ってるんですけど、いわゆる精進料理はお寺とかでお葬式とかが終わった後に出される料理で、お坊さんの修行の時の食事なんです。だから質素なんですよね。肉、魚の動物性のものは使わないし、五葷(ごくん)って呼ばれるネギ、ニラ、ニンニクなどの香りの強いものも使わないんです。だからすごく、いい意味だと淡いんですけど、悪い意味だと全部同じ味、薄味なんですよ。
それを、普通に作ったらただの精進料理なんですけど、盛り付け方を工夫したり。使ってる器も全部、わたしが作家さんにお願いしたもので。お坊さんが使う入れ子の漆椀をベースにして、工芸作家さんにガラスとか木とか磁器とかでお願いして。食器からまず入っていただく。そこに盛り付ける料理も、意識としてはちょっとフレンチっぽくというか、
岩田:ああ、なるほど。
仁美:懐石料理だと、華やかな飾り葉とか、食べれないのに花で飾ってあったりするじゃないですか、そういうものは使わない。あくまで全部食べれるもので。より綺麗に、美味しそうに見えるように、わたしは意識して作ってるんです。
そうはいってもやはり精進料理なので、肉とか鰹出汁とかの旨味に比べたら少ないですね。じゃあ、こういう野菜だけの料理でも、どうやったらその瞬間を楽しめるか? もっと食事の時間を集中して過ごせるのか? っていうので、そこから香りの体験に繋がったんです。
やっぱり海外の方は精進料理を食べることがない、初めてのものなので「これは何?」「これは何?」って聞かれるんです。意識がそこにすごい集中してるんですよ。
一方で日本の方は精進料理、なんとなく知ってる、なんとなく食べたことがある。たとえ食べたことはなくても和食だっていう固定概念はある。なので「海老芋の煮物です」って言われたら「そうなんですね」ってなる。でも、その「海老芋の香りはなんだろう?」とか、「味付けはなんだろう?」とかっていうことは、すごくすごく意識しないと感じれない。やっぱり普通に生活してるだけでは感じきれないので、一回、香りの体験を入れる、みたいな。
それもわたしの中ではデザイン、食事というデザインなのかなと思ってて。そうやって、この岸家に泊まって過ごす一日という時間がデザインできたらいいなっていう感じで、石鹸一つとっても、散りばめてるっていう感じです。
岩田:だいたいそういう什器とか、アメニティは、仁美さんがセレクトされてる?
仁美:そうですね、わたしが。
岩田:ああ、すごくいいですね。
人の興味をかきたてるための、ちょっとした仕掛け。
岩田:お話を聞いていると、岸さんたちがやられてることは「解像度を上げていく。で、みんなにも、いろいろな面で解像度を上げてこの世の中を見て欲しい。そういうことに気づかされる体験を提供しますよ」っていうことかなあと。
そうなると、この岸家を立ち上げた時の岸さんたちの解像度はどこだったのだろう? やっぱりそれを自分たちの営みとしてこの1年ちょっとやられてくると、自分たちの解像度もかなり上がってきた面もありませんか?
岸:確かに、香りの体験とかはやっているうちに気づいたことなので、上がってるところはあると思います。
あと、人ってけっこう興味で力が湧くんだなっていうのをいろいろ見てきて感じるようになって。
海外からのお客さんで、あんまり集中できない、ADHDと診断されてるお子さんがいらっしゃったことがあって。うちは宿泊室に折り紙を置いてるんです。折り紙が珍しかったんでしょうね。Youtubeに折り紙の作り方の動画とかが英語でもあるので、その子がそれを見ながら、ゾウだったかサイだったか、「初めて折り紙を折って作った」と、親御さんがすごい嬉しそうにシェアしてくれたんです。「こんなに集中してものを作ってるこの子を見たのは初めてだ」って言われて。すごい喜んでもらって。
解像度の話とは微妙にずれるんですけど、人の琴線に触れるものを散りばめることは、すごい大事なんだろうなと思って。香りの体験とか茶道とか、僕らが積極的に打ち出していくのも大事なんだけど、折り紙をただ置いておく。あと積み木も置いてあるんですけど、その積み木も、
仁美:ちょっと変わった積み木なんです。折り紙もちょっと変わった薄い木の皮の折り紙で。
岩田:へえ。
岸:それが人の興味をかきたてて、やってみるっていうことに繋がる。
そういう解像度の上げ方は、宿を始めてからの新しい発見だったなと思って。今はそういうのをどんどん増やしてるところです。
凡事徹底
岸:これは野口さんから教えてもらったんですけど、「ストレスがないお店を作ったほうがいいよ」と。
岩田:どういうことですか? お客さん側にストレスがかからない?
岸:そうです。
トイレがちょっと臭うなとか、ここがちょっと気になるなとか、そういうことの積み重ね。
例えば雨の日に、なんかちょっとじめじめしてる店だとか、
仁美:床が濡れてて滑りそうだなとか、傘はどこに置くんだろうとか、
岸:「そういうのをなくしたほうがいいよ」って言われて。ああ、なるほどと。それができて初めて色が出せるというか。
岩田:野口さんの言う、凡事徹底(*当たり前のことを徹底してやろうという考え)ですね。
岸:そう、凡事徹底。
岩田:それは「そうだよね」って思うのは簡単だけど、こちら側はそのことに意識的に気づかなきゃいけなくて、なおかつそれに対して準備しておかないといけないわけで、すごく難しいことですよね。
岸:難しいし、そこから「プラス・ファン」の感覚、「これ楽しいな」っていうのを加えなきゃいけない。それが例えば積み木とか折り紙で。あと、うちは紫蘇ジュースを出したりするんですけど、「この紫蘇ジュース、美味しいな」とか。ここから見た景色、歌川広重の浮世絵みたいだなとか。
僕らが「これ、いいでしょ」「これ、いいでしょ」って思ってるところじゃないところで、そういうものをどれだけ拾い上げられるかが大事だなって思います。それには凡事徹底をしないと、そこが感じられなくなる。
ていうのが、「解像度が上がったでしょ」っていうことへの一つの回答かな。
岩田:ありがとうございます。
別荘をプロデュースしたい
岸:あとは、時代の変化かな。前に取材してもらった時、4年前ですかね、
岩田:4年前、2017年です。
岸:あのころは「知足」とか「日本を住まう」といった話を人にしても、「は!?」とまでは言われなかったですけど、「はあ」みたいな反応が多かった。
それがこの4年で、SDGsとかグリーンエネルギーとか言われるようになってきて。さらにそこにコロナっていう問題が来たじゃないですか。つまり時間の過ごし方とか、ステイホームとか、「自分に向き合う」ことが問われる時代になってきて。
それまで話しても「はあ」みたいな反応だったのが、2020年ぐらいからは、「そうそう、わたしも実はこういう思いがあって」とか、アクティブな言葉が返ってくるようになって。
時代が変わってきたなって思いますね。コロナで今は大変ですけど、少し落ち着くと、僕は面白い時代になるんじゃなかなと思ってます。
岩田:英語で「一人であること」には二つ言葉があって、ロンリネスとソリチュードという言葉があると。
日本人は一人でいることを「ロンリネス=寂しさ」だとネガティブに思い込んでいる人が多いけど。まさにステイホームになったときに、一人でいることがロンリネスでしかない人は、こうした状況が耐えられないと思うんですよ。
だけど、一人でいるというのは、自分と向き合う力、ソリチュードのことでもあって、これは人間にとってすごい重要なんですよね。
さっき解像度を上げるっていう話をしたけど、ステイホームになってこういう意識が問われるというのは、ロンリネスに飲み込まれちゃいけない、人は本質的には一人であるという事実、ソリチュードであることを見直さなきゃいけないっていうことを、僕はすごい感じるんです。
岸:まさにそうで。なので今、そうしたことが問われ一つ考え方が変わってきてるっていうことは、僕はいい意味として感じてますね。
今はこうして宿を運営しつつ、企業さんの支援とか、商品撮影の場所として使ってもらったり、ほかにも研修みたいな感じで茶道体験をしてもらったり、そんな感じのことをしてるんですが、今後していきたいなと思ってるのは、コンサルテーションっていう言い方になると思うんですけど、僕らの考え方をシェアしたいなと思ってて。お客さんの単価を上げたいとか、オリジナルな体験ものを作っていきたいとか、そういう相談も少しつずきているので、それをやっていきたいなと。
あとは、お客さんに別荘を建てたいなと思ってて、
岩田:どういうことですか?
岸:海外の方でも日本の方でもいいんですけど、岸家で提案しているようなスタイルを自分の別荘として建てて体験したいっていう方のために、
岩田:別荘を岸さんたちがプロデュースしていくと?
岸:したいなあと。
ちょうど土地購入から宿運営まで全部自分たちでやりきったので、そのノウハウをシェアしたいなと。
岩田:その別荘は日本で?
岸:例えば、海外の方でも日本に別荘を建てることはできるんですけど、不安じゃないですか?
なので、土地選びから建築家選び、あと細かいもろもろの面倒を見てあげるっていうことをしたいなあと。
毎回岸家に来て宿泊していただいてもいいんですけど、最終的には別荘みたいな提供の仕方が究極なのかなと思ってて。
仁美:泊まっていただいた海外の方で、20代ぐらいの女の方がいるんですけど、この岸家の空間とか生活スタイルの体験をすごく気に入っていただいて。わたしが選ぶ日本の食器、館内着の作務衣とか、茶道体験で使った茶碗とか、そういうのを「一通り選んで送ってください」って言われたんですね。一通りっていうのは、そういうスタイルを生活に入れたいっていう方だったので、そこから別荘という考えがでてきて。
別荘が正しい答えかはまだわからないですけど、そういう空間とものが作用する生活ですね。過ごす時間っていうのかな。それを提供する。提供っていうか、紹介みたいな感じですかね。すごく仲のいい友だちが「これいいよ、あれいいよ」って。そういうことがフレンドリーな感覚でできたらいいなあって。
コロナの影響は?
岩田:コロナの影響はどうですか?
岸:海外の本で「10ページぐらい使って取り上げたい」とか、そういう話も結構きてたので、2020年は伸びると思ってたんです。そうしたらコロナで「いや待て」っていう状況になったので、出鼻は挫かれた感はありますけど。
それでもほぼ前年とトントンです。
コロナで海外からのお客さんが減った一方で、今までお客さんじゃなかった方たちに来ていただけて、新しい楽しみというか、僕らにとってのモチベーションになったっていうのはあります。
GoToトラベルとかで大学を卒業したばかり、社会人一年目ぐらいのカップルのお客さんもたまに来たりするんですよ。
岩田:へえ。
岸:2019年は8〜9割は外国からのお客さんだったのが、2020年は逆に8割ぐらいが日本のお客さん。
結婚10周年で宿泊される方とか、彼女の誕生日だからとか。卒業旅行なのかわからないような若い方が来たりとか。
つまり今までターゲットではないと思ってた層の方に来ていただけるようになって、そのおかげで、僕らにとっても外の関係ができた面があって。
「ああ、こういう考え方とか感覚があるんだな」って、僕らにとって気づくことも多いですし、もしそういうことがないまま「これがいいんだ」みたいに自分たちの世界が固まっていったら、いずれ止まっちゃうと思います。
なので、常に外との関係を持ちながら続けていくことが大事だなって。
そういうのもあって今、地方自治体の人ともプロジェクトを始めだしていて。小さなプロジェクトかもしれないけど、そうやって外との関係をつくっていくような動きをしていこうっていうのが、今回学んだところなんですね。
岩田:今日はいろいろお話し聞かせていただき、ありがとうございました。
あとがき
岸さんが提示している「知足」という概念は、岸さんも言っているとおり古くからある概念です。岸さんはその概念を今あらためて提示することで、次の時代を生きようとしています。
僕の今回の取材の興味はそこにありました。「未来とは常に後ろ向きに入っていくものだ」という感覚が、僕にはあるからです。
新しい技術や新しい考えが、本当に新しい未来をつくるわけではない。人類が過去に獲得してきた考えを、今の時代の文脈でどうやれるのか。そうした「古さ」を現代に通すことによって「新しさ」といわれるものが生まれてきます。
岸さんがこの記事で表明してくれた「知足」や「日本を住まう」といったイメージは、おそらく100年、200年前の社会でも、同型のことが言われていたと思います。時代の前線は昔からさして変わらず、人間の根元にあることを、その時代の社会状況のなかで微妙な差異を加えながら反復させています。そして「人間の根元」といえるその一つの大きな問いが、「人は自分のモジュールをどう知った上で生きるか?」という知足の考えにあるように思います。
もう一つ言うと、岸さんには禅宗菩提寺の家系の出自という個人のヒストリーがあります。岸さんはそうした個人性を掘り下げることで、知足という、個人を超えた普遍性を提出しています。「新しさはいつも過去から始まる」ことに加え、もう一つ重要なのが、「普遍性はいつも個人性(単独性)から始まる」ということです。個人の体験こそが、普遍的なことを知るための土台になります。
じゃあなぜ「足るを知る」という古い概念を、あらためて今言う必要があるのだろうか? それは端的に、自分の暮らしに必要なモジュールが、今の多くの人にはわからなくなってしまった社会背景があるからだと思います。
そしてこうした岸さんの試みを、VOGUEなりTelegraphなり、世界のメディアが取り上げます。そうした現象の裏側には、日本だけではなく「世界全体が自分に必要なモジュールがわからなってきている」という皮肉な文脈があり、それゆえに「これからの」という未来的な文脈において注目が集まってくるという一面があると思います。
岸さん夫妻はそうした文脈の中で、今回の記事にあるようなお話をしてくれました。
重要なのは、これは岸さん夫妻の表現だということです。「岸さん夫妻は自らをそう表現した」ということが、「岸さんたちにとって」重要なのです。
僕たちはどうでしょうか? 僕たちは、自分自身の単独性・個人性において、どう過去を掘り下げ、どう未来を捉えることができるのでしょうか? 僕たち自身もまた、自分で物事を考え、何かを発する主体なのだから。
お読みいただきありがとうございました。(岩田)
日本文化に親しみ、「知足」を体感する新しい旅のスタイルを提案する一棟貸し宿泊施設「Modern Ryokan kishi-ke」のWebサイトはこちらから。