箱根の家 気仙大工の建てた古民家を岩手から箱根へ移築再生 柴山夫妻に聞く(前編)
箱根の家 気仙大工の建てた古民家を岩手から箱根へ移築再生 柴山夫妻に聞く(前編)
株式会社山翠舎の山上浩明が「箱根の家」の所有者、柴山ご夫妻に
実際におこなった古民家の移築や再生について詳しくお話を伺いました。
この古民家は気仙大工が幕末から明治につくった貴重な家屋の一つです。
夫妻は1998年後半から古民家を探す旅をはじめました。
気仙大工の作った180年前後の貴重な古民家を発見し、芦ノ湖を見下ろす斜面に
現代の建築と古木の融合する新しいスタイルで移築します。
まさに「ハイテク古民家」です。
ご夫妻は「ZEKKEI」というコンセプトで 新しいライフスタイルの提案をしています。
古民家の見つけ方
山上 浩明(以下、山上):
ご自身のイメージに合ったこの古民家はどのように探し出しましたか?
柴山信廣氏(以下、信廣):
この家を見つけたのは..30件40件ほど見たかな。
会社の休み土日だとか年末年始だとか。
そこら辺にね北上しながら、ずっとこうウロチョロしながら見てくるんですね。
朽ち果ているぞ それで古民家 !
近くに別な新宅がある所に行ってみて
これを売ってくれないかなという風にピンポンと年末年始やるんですね。
それでビックリするんです 向こうも。
怪しですよね。
ということで先が長いよな…どうしようかなと思っている時に
民家再生協会に会いました。
東北の方が経験上古材が太い。
太いのに憧れちゃった。
それで仙台とか岩手へ行きこの家を探し当てたわけです。
2001年とかです。
山上:奥様も一緒にドライブして?直感であそこいけそうとか?
柴山千枝氏(以下千枝):
最初はね、情報が全然ないから直観で行くしかなくて、東北だとか岐阜だとか福井へ行ってたんですけどけれど梁とか柱とか違うのよね。
それで東北の方がいいのかなと思って東北も行ったけれど探しあてられなかった。
当時も今もそういう情報って少ないですよね。
いろいろ探していくうちに雪が深い所のほうが、梁やらその辺が太いのではないかと。
山上:それは正しいですね。その通り。
千枝:それで岩手県の方にいったんです。
山上:そこで聞きたいんですけど、私 長野生まれなんですけれど
長野 新潟にも沢山(古民家は)あるんですけどいきなり岩手へ?
信廣:行きましたね 行った。まあ、全部は見ていないからね。わからないね 。
山上:それで岩手って凄いですね!ここはどういう経緯で?
信廣:そのコディネターが5件ぐらい紹介してくれて、ここが良いなと思って。
ココにしようって。最終的に(妻と)耳もとで打合せして。
山上:その時に空き家だったんですか
柴山:いや住んでいたんです 。住んでいたんだけれども新築が建っていて。
山上:もうすでに何十件見ていたわですよね。だから見る目が肥えてますよね。
ここは凄いなという感じが、梁など先に見せてもらいましたけれど、 大黒柱とかちょっと違いますよね。
此処は凄いなという感じがします。
千枝:見かたはね慣れたかもしれないわね。
山上:奥様のほうの お母さまはそうでもないみたいな…
千枝:それが母が生きていたら 今ね本当にね言うんだけれども。
なんて小さい家なのなんて言われて、ワーと思ってしまって。
でも、思い出したら母の実家が気仙大工が建てた家だったのよね。
山上:ご縁が凄いですね
千枝:そうなのよ。で、調べていって従姉妹がいるんだけれどもね、
その従姉妹も(家が)余りにも大きすぎちゃて、ここだけと言う所だけしか残していないないんだけどね。
余りにも大きすぎるからそこは踊りの練習場にして、
住まいは仙台にして踊りを教えている時だけ通っている。
従姉妹ともそんなに話をした訳じゃないんだけれども
気仙大工と言ったら あぁヤッパリね と言う感じだったの
気仙大工の特徴
山上:何か特徴は直ぐに感じました さっき見させて頂いて。特に模様ですね。
そもそも斧とかマサカリとかそう言うので木を丸くあって削って行く所で
梁とかってそいうところまで、そんなに手間をかけないっていうか
ちょっと転がらないように少しこうするとかそういう類なんですね。
だけど、ここは見えないところまで凄い手間を掛けているなというそういうのを凄く感じました。
模様をつけると言う発想ですかね。
他の古民家は、形作られたらいいやみたいな。天井裏みたいなのは大体そうなんですよ。
そこまで確りと綺麗に刃物を入れているって言うのは、なかなか見た事がないですね。
千枝:ああ良かった。
そこの子供達が寝ている様な部屋がありますよね。
屋根裏部屋と言っているんですけれど、凄い梁があるでしょう。
そこに手斧とか、凄い暖かみを感じるのよね。
山上:アナログ感も凄いですね。機械でも無い ノコギリでも無い…
千枝:粗々しいんだけれど そういう所の丁寧な仕事というのか、
(気仙大工の)愛情を感じるのよね。
入手するまでの経緯や土地のこと
山上:そう言う所にビビッときた訳ですね。ビビッときて囁いた訳ですよね。
囁いて・・・どうやって入手するんですか?すんなりと行くものなんですか?
信廣:良いんじゃないのと話をして それで、値段をコーディネーターに聞かなければいけない。
コーディネータに聞いて、良いよと言う風になって、まあじゃ 買おうって。
千枝:こっち(この土地)が先にあったのよ。
山上:さら地として。元を探していた訳でしょ。
信廣:たまたまこのスケールに 1000坪
千枝:2区画を買わなければダメといわれていたんですよ。
そんな広いとこ買ってどうするんだろうと思ったんだけど、
ここの逆さ富士地区の売り出してる所ってここしか無い状態だったのよね。
山上:運命的な物件ですね
信廣・千枝:そうですね。
千枝:じゃあ土地だけ先に買っておこうかということで、土地だけ買っていた。
山上:その辺のもまた大変ですね。
土地だけ買っても上(古民家)がすぐ見つかるかなんて保証は無いんですからね。結構こわいですよね。同時に出来たら良いですよね。
信廣:ほぼ同時だね。
解体費用について
山上:動いて見つかってコーディネーターに…細かい話ですけど、向こうから金額がくるって感じですか?
千枝:最初はお爺さんが良いっていってたんですよね。
山上:解体費用を持つから逆にゼロというか、普通解体費用でも何百万か掛かるのでそこを新しく買った方が肩代わりするっていう考え方で実質ゼロにするというやり方もあるし、いろいろあるんですけれども
プラスアルファかかったってことなんですね。
そこまで行くケースってそんなにないかもしれないですね。
勢いが無いとこういう大きなことって駄目じゃ無いですか。
で、調達できましたというところで、設計の方にて ということになるのですか?
信廣:そうですね。
建築家への依頼
山上:では、コンセプトに入ってきて頂きたいのですけれど、コンセプトがあって まず頼む訳じゃないですか。
信廣:古民家をやりたいんだけれども、興味ありますか?と聞いてみて
「うん 面白いじゃないか」という話になりました。
まあ、それでじゃあ頼んで良さそうかもしれないなと。それで動いてみたんだ。
(建築家は)大学の教授だったからまあ両方(JIA理事)だから、しっかりしているだろうと思って伺った訳ですよ。
そうしたら桜木町の小さな歴代のビルの中にあって小さな部屋を借りているんですよ。
アシスタントは一人しか居ないんです。
え〜平気かなと思って。
話の言葉が全然少ない人でね。
「ん。ん。ん。」と言う それで分かるんですよ。
まぁ頼んで向こうからくる古材の資料という物がヤッパリね、
東京の人なんですね。やはり見ていないから細いんですよ。
こちらが思っているのを見せて「ん!」というから面白いんじゃないかなと納得いって。
それで頼んだということです。
ボリュームが元々大きな家だったじゃない?一階の高さをなるべく高くしてくれと。
コンセプト「ZEKKEI」とは
山上:箱根のほうが拠点となってみたいな、
今となっては凄い最先端をいってる感じですね。世の中 まさにそうなっているところってある。
千枝:そう そうね。
※信廣氏モニターにコンセプトの紹介サイトを表示
山上:見ましょう。あ!かなり すごいですね 動きがかっこいい。
信廣:好きな場所と空間に住み始める。どこに住んでもどんな家でも
良い時代。箱根は本拠地東京は観光地
山上:逆をかく見たいですね。ああ なるほど。
信廣:これがコンセプトなのかなぁと思っていまして。
日光でも良いんです これがどこでも使い回せる。
※信廣氏サイト内の写真をさし
これがね家の中を見ている驚きの顔です。
山上:なるほど。
信廣:2018年にこの人と会って、コディネータです。
千枝:佐々木さんと言います。
お家を持ってたお爺さんの息子ですね。メガネをかけている人。
山上:この方も こちらに来てくれたんですか?
千枝:私達が行って。
山上:その後も繋がっているんですか?毎年のようにみたいな?
千枝:お米を送って頂いたりとか…
何かこの家があって、皆んながね 血が繫がっていないんだけれども本当の親戚みたいな感じです。
山上:良いですね。
千枝:だから家って ものすごく大事だなって。こちらにもいらしゃたりも…
今年くる予定だったけど、ちょっと病気しちゃって。 来年またくる予定です。
(ご縁を)大事にしなきゃいけないなって。
これはGマークにだしたときの
山上:おっしゃってましたね
千枝:一次は通ったんですよ。
山上:ホームページは まだできてないっていうのは、まぁちょっと意外と言えば意外ですが。
信廣:家のコセプトはねできていたんです。
※信廣氏、YouTubeを再生
山上:これはもうYouTubeに乗っているんですか?
信廣:そうです
2020年が共にコロナと共に生きる好きな空間に住み始める。
2020年〜ZEKKEIはそんな新しい考え方を応援しています。
山上:このサイトを作るって事はその考え方をより多くの人に伝えたいと言う事ですよね?その中で応援をしていきたいっていうことなんですか?
どういう立場でどういう風にしていきたいというふうに思われて?
※信廣氏書類をもって来る
山上:あっ!ZEKKEIが取れたんですか?商標じゃないですか 古木と同じ。
柴山:二つあって、一つは僕はグラッフィクデザイナーじゃない?
一人でやっていけないかというこを考えたんですね。
ちょうど箱根という所がピッタリだって事が解って。それで始まったという事ですね。
山上:古木は単純で沢山使って欲しいなというのがあるんですね。
古材だとただ単純に古い材料だけれども、古木というのは今仰ったように
その岩手の家族と繋がるみたいな所、どこから入手したか分かるかって言うのが
古木っていう意味でつけているんで、
そういうまさに柴山さんがやったような事を多くの人がやってほしなというという思いがあって。
今私が知りたかったのはこういう生活スタイルがいいから他の人もやろうよ、と言うような意味があるのかなって 思って。
千枝:さっきも言ったけれど、売ってくれた人とも血が繫がっていなくとも
行ったり来たりしながら、泊まってゆっくりして帰ってもらうみたいな、
なんかそういうのを、やりたいなって気持ちで元々いたんですよ。
最初からね。
山上:繋がりを呼んでいますね。この場所が。
千枝:ただ、ボランティアじゃ無いから
皆んなが納得してくれてる金額をね会員制だから会費を取ってやろうねって
言う話はしてたわけ。
山上:その商標に込められた思いもコンセプトもそういったものも入ってるってこと?
信廣:そうですね。
ZEKKEIと言うのは日本の国土が70%以上が山林なんです。
山林に家を建てるっていうのは普通は無いじゃない 。
平地って大体は都会じゃない。
山の中に住むとなると… 熱海が山の中じゃない。
熱海は山斜面に対してビルがボンボンボンてあって、結構ZEKKEIてものが表面に出ているんだよ。
10階のものは10階、こんななってドワーンと有るんですよね。
山上:うん …分かります。
信廣:それが凄いよね。
後編に続く。
柴山信廣氏がこの古民家を見て、大工の技術、建材の素晴らしさなど、様々な点に感動し、未来に残すべきと直観されたそうです。 移築の際に現代の技術も取り入れて、「ハイテク古民家」として生まれ変わった古民家はさらに貴重な建物となりました。 また箱根の移築場所は富士山が正面に見え、芦ノ湖や箱根神社も望める大変美しい場所だそうです。 長い年月をかけて素晴らしい建物と景色を見つけ出し、形にした柴山ご夫妻の ぶれない思いに感銘をうけました。
箱根の家/風景写真提供:柴山信廣氏