【Taste the Time ~ 古木、古民家がつなぐストーリー ~】第二話 「Airbnb」のお話

インタビュー
公開
391 Views

◆日本らしい建物の活用

海外リゾートの別荘?
それとも、お寺や日本家屋のお庭で見かける鯉の泳ぐ池?
斬新な現代アートを見る感覚!

プールで泳いで縁側でスイカを食べるような、海外リゾートと日本の里山リゾートが同時に楽しめる夏の過ごし方ができるかもしれない。

「家の中にはジムもあって、庭にはテラスやバーベキューコーナーも。一棟貸で8人まで泊まれるので友人や家族などグループでの利用も多いですよ。」
と多種多様な民泊を紹介して下さるAirbnb JAPAN㈱の長田執行役員。

日本家屋の雰囲気にジムというのも衝撃!
日本らしさや昔ながらの趣と、現代の使いやすさの“新旧ハイブリッド”がおもしろい。

◆コロナ禍では里山の古民家一棟貸が人気!?

「今は海外でも日本でも自宅から3~10km圏内での身近な旅がトレンド。今まであまり旅行先ランキングには載ってこなかったスポットの人気が出てきています。」(長田さん)

確かにどこに旅したか?と聞くと、観光地名ではなく町名で答えるような人が増えている気がする。

「特に、建物を体験することで、住んでいた人の歴史や素材を感じ取ることができる古民家はおもしろい。古民家といっても地域によって養蚕農家や町家など形も使われていた用途も色々。」(長田さん)

お蚕さんを飼っていた中二階がある養蚕農家も、
細長いおくどさん(かまどの調理場)のある町家も、
欄間や組子などの洗練されたデザイン・技術があり、
収納をコンパクトにする箱階段、風と光を取り入れやすくする坪庭や天窓など生活の知恵もあり。
1つの家にこれらが凝縮されている。

海、山、商店街など地域ごとの気候や生活様式によって使われている素材も異なり、建物の構造も異なる。同じ街道沿いはみな似かよった建築様式で、別の街道と交わる所からまた別の文化が始まっている。

古民家を活用したカフェやホテルは、どの部分をどのようにリノベーションしたのか謎解きをする楽しさもある。泊まりながら様々な古民家をじっくり味わってみるのも良いかもしれない。

◆木の素材を楽しむ地域体験

古民家と同じようにどっぷり地域体験ができる民泊。
奈良県吉野町にある「吉野杉の家」だ。

「HOUSE VISIONという未来の家の展示会で展示された12の作品(家)の1つです。長谷川豪さんという建築家とAirbnbがつくり、展示後に吉野に移築し、今は複数の地域住民が共同で運営しています。吉野杉の家が地域の核となり、そのエリアに観光客が増え、交流が生まれています。」(長田さん)

 民泊が地域を知るきっかけになっているに違いない。

「古民家も吉野杉の家も、建物の技術や木材活用は林業活性化につながり、建物を取り巻くエコシステムがある。木を伐りだして木材に加工する人、家をつくる人などの技術者も含めて、これらを将来に向けて残していきたいと思う。」(長田さん)

最近よく聞くSDGsという言葉。こういうエコシステムがまさにそうなのだと思う。 

◆民泊の観光以外の使い方

2拠点居住やワーケーションなど、観光と生活の境が曖昧になりつつある今、民泊の使い方にはどのようなものがあるのだろうか。

「アメリカでは、引越をしたり、家を買ったりする前に馴染めるかお試し宿泊として民泊を利用することが多くあります。2拠点居住をする時にも1週間仮に住んでみて、地域を理解してから移住すると良いかもしれません。」(長田さん)

なるほど。民泊しながら引越し先を探している人をあまり見聞きしたことがないが、これからトレンドになるかもしれない。

「あと、サバティカルって聞いたことがありますか?
イタリアにグロットレという限界集落があって、NGOと連携してサバティカルプログラム(民泊体験企画)を行ったことがありました。1ヶ月間、村の活性化につながる地域の活動に参加しながら滞在するのです。その他、南極でマイクロプラスチックの影響や環境変化を調べるサバティカルプログラムも行ったことがあります。」(長田さん)

なんと魅力的!だが、1ヶ月イタリアに行くには仕事を休めず、ハードルが高いという人が多いのではないか。

「既に日本でもサバティカルを取り入れている企業があります。社員に1~2年の充足期間を設け、習い事や地域活動などを組み合わせて行っている様子です。日本でもワーケーションや休暇の長期化の傾向が出てきているので、地域に宿泊しながらサバティカル休暇というのも良いかもしれませんね。」(長田さん)

是非、日本の企業にもこの休暇や研修を取り入れていただきたい!

限界集落の活性化、地方と都会の人の交流、社員のコミュニケーション能力や創造力向上に加え、お年寄りと若者の心身の健康維持など双方にメリットがありそうだ。

◆建物の魅力、地域の魅力、人の魅力

実は一番聞いてみたかったこと。今、世界で一番注目の民泊!

 「インドのジャイプールにある今なおマハラジャの末裔が暮らす貴族の王宮の一室で、1泊82万円です。(今年10月現在)」(長田さん)

なんと建物も金額も華やかでスケールが大きい!
小さい頃に読んだ絵本に出てくるお城のよう! 

「城、国や県の重要文化財などの歴史的な建築物は日本でももっと活用できると思っています。海外では有名建築家の設計した建物の民泊も人気。パリでは閉館後のルーブル美術館に泊まれる企画も行ったことがありますよ。」(長田さん)

城、重要文化財、美術館・・・泊まるには様々な法律や地域のルールなどがあるのだろうが、まだまだ広がる未知の体験に期待したい。
この建物に泊まりたいという動機が国や地域との接点になっていくに違いない。

「良い建物・空間には良いお客さんが来る、そうするとブランド価値が出て店舗スタッフも良い人材が来る。空間の魅力が魅力的な人を呼ぶというサイクルがある。」(山上社長)

建物が人を惹きつけ、人が人を惹きつけるそうだ。

「Airbnbで人気の地域には核となるホストがいる。ホストに会いたいという旅行者が来る。宿泊・体験ホストは始めやすいビジネスであり、女性やシニアの活躍にもつながっている。
コロナ禍で先が見えない時でも、human connection(人と人の繋がり)はなくならない。belong anywhere、誰にでも居場所があるのだと思う。」(長田さん)

直接人に会えない時にも、地域を訪れることができない時にも、手紙、電話、メール、SNS、クラウドファンディング、ふるさと納税などつながる手段のバリエーションは広がってきている。
human connectionが、個人の心豊かな暮らしを生み出す。
そして、人とのつながりという資産が地域の豊かさにもなっていくのだろう。

写真の出所:Airbnb HP https://www.airbnb.jp/

この記事のライター WRITER

山野井友紀

歴史的な建物やまちなみ好き。大学時代は東洋美術史学を専攻。2008年に株式会社日本政策投資銀行に入社し、現在は地域企画部にて地域活性化やまちづくりなどの調査、研究を行っている。