今日の古木#6「古民家の免震技術、叉首(さす)とは?」
今日の古木#6「古民家の免震技術、叉首(さす)とは?」
山翠舎大町倉庫にあるたくさんの古木たち。そんな中から、また新たな住居や店舗などに活躍の場に移そうと今か今かと待ちわびている古木たちを『今日の古木』と題し、1本ずつ紹介していきます。第6回は、世界的にも地震大国とされる日本。そんな中でも崩れることのない古民家を支え続けている叉首について。
目次
今日の古木情報
お待たせいたしました、今日の古木!
今日はいつもと少し違う感じで情報をまとめてご紹介します!
樹種:ナラ
原産地:新潟県妙高市上平丸
古木年数:1812年(文化9年)
寸法:150Φ×3400
今日の古木は前回の古木の相方!?
今日の古木と前回の古木、、、
実は、相方どうしなんです!
情報をまとめたのはそのためです。笑
冒頭の時点で、「ん?これ前回の古木と一緒じゃないか?」と思った方もいると思います。
見た目も寸法も産地も年数も似たり寄ったり。
瓜二つの古木たち。
ではでは、この2本が相方同士とは、どういうことなのでしょうか?
叉首(さす)とは?
これは前回の古木。
そして今日の古木。
前回の古木と今日の古木を見比べてみます。
2本合わせると何か形が浮かんでこないでしょうか?
ちなみに「×(バツ)」ではないですよ。笑
答えは「△(三角)」です。
これらはいわゆる合掌造りの三角の屋根を構成する部材でその名を「叉首(さす)」と言います。
前回の古木の先端部。よく見るとほぞ穴が空いています。
こちらは今日の古木。ほぞ(凸部分)がついていますね。
この2箇所が組み合わさって、三角屋根の左右の斜辺部分ができています。
しかし、この2本だけでは三角形は作れませんよね?
では、この三角形の底辺にあたる部分はどのようになっているのでしょうか?
地震エネルギーを逃がす、和風トラス構造
前回の古木の下端部。よく見ると鉛筆の先みたいに尖っています。
そして今日の古木。こちらもまた下端部が尖っています。
三角形の底辺にあたる部分にはいわゆる「梁」がきます。
梁の上辺に穴を開け、そこに叉首の尖った下端部をそれぞれ差し込み、三角の形が出来上がります。
この三角形の構造は、それぞれの結合部分には一切の釘やビスなどは使われていないことから「和風トラス構造」とも呼ばれます。
トラス構造とは、複数の三角形による骨組構造のことであり、結合部である「節点」はボルトやピンなどで結合されています。
釘や接着剤などを使わないことにより、地震が起こった際に構造(骨組み)が「抵抗する」のではなく、なすがままに「揺れる」ことで、建物が崩れないようになっています。
地震大国である日本において、現代では「地震に耐える」耐震構造の家が建てられます。
しっかりした基礎を打ち、地震の力が分散するように多くの強い壁を入れ、強い揺れにも影響されない軽い屋根を採用するなど、このような家は「地震に強い家」なのです。
しかし古民家は、近年の家とは正反対。基礎はなく柱は石の上に乗っかってるだけ。
そこらじゅう開口だらけ、部屋同士の間仕切りもほとんど襖で壁は少ない。
屋根は重たい陶器製の瓦。骨組みには釘を使わない。
だけど、実は非常に地震に強いんです。
これは、今の「耐震」という考え方に対し、昔は「免震」という考え方で建てられていたからです。
昔の人の知恵や技術は、改めてすごいものだと感じますね!
ではでは、今日はこの辺りで!
次回の古木でまたお会いしましょう!!