「子育て、仕事、人生」煮込みや まる。秋長喜実子さんに訊く。後篇「働く姿」

「子育て、仕事、人生」煮込みや まる。秋長喜実子さんに訊く。後篇「働く姿」

子育てと仕事、両立することはできるのか? 後編は、妊娠・出産と経験しながらお店をどう続けていったかのお話です。


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後篇「働く姿」

秋長 喜実子(あきなが きみこ)
1985年、大阪府八尾市生まれ。
大学卒業後、飲食業の会社に入社。居酒屋を中心にホールからキッチン、店長などの職を経験。27歳で独立し2013年、東京荻窪にて煮込み料理をメインとした居酒屋「煮込みや まる。」をオープン。各誌にフォーカスされる。16年10月に長男・健太くんを出産。子育ても含め、お店が人生そのものとしての経営を続けている。

子どもも店に入る


山上 浩明(以下、山上)
お母様のほうは大阪ではご実家があって?

秋長 喜実子(以下、秋長)
母は1人で暮らしてたんですね。
学校の先生だったんですけど、定年も過ぎたので嘱託で週3回くらい働いてて。
それをまあこの4月でやめて、こっちに来るって、

山上
引っ越して来られたんですね?

秋長
はい。もう住民票も全部移して。

岩田 和憲(以下、岩田)
実際、1人で店を持ち、子育てしながらお店もやってる方…、秋長さんと同じような状況でやられてる方が、知り合いの方たちのあいだでいますか?

秋長
えっとねえ…大阪のお店で一つあるんですけど。
人伝に聞いて1回メールしたことがありますけど、その方も「母と、あとスタッフに任せてることが多い」って言ってましたね。
「自分で店に立つことは減ってしまった」って言ってましたね。

岩田
なかなか難しいですね。
今、母親として子どもと関わる時間っていうのをどういうふうにとられてます?

秋長
もう店で関わる、みたいな。
5時にオープンして、スタッフがいるときだとわたしは子どもと遊ぶ。お客さんもいるんですけど、子どもとお客さんと遊びながら店にいる、みたいな。

岩田
このお店の中にお子さんが入ってるんだ。

秋長
おんぶしてるときもあるし。
すごく忙しかったらできないですけど、5時、6時ってそんなに忙しくないんで。
いてもお客さん1人とかだったりもするので。
そしたらそのお客さんは知り合いの可能性が高いから、「大きくなったよー」とか言って。
で、この辺に座らせて、遊びながらやったり。
忙しくなったら「じゃあバイバイ」って言っておばあちゃんのところへ。

岩田
うん。

秋長
いっとき夜間保育とかも考えましたけどね。

岩田
できるならおばあちゃんとか、身近なところでこの家でいてくれるほうがいいですもんね。

秋長
はい。ちゃんと昼間は活動的に保育園で過ごして、夜はここでっていう。

山上
保育園は無事に入れたんですね。

秋長
運良く。
まあ復帰してたからっていうのが大きいですけど。
出産後、すぐに働いてたので。

家業にしたい


岩田
子育てをしながら、1人か2人でも回せる小規模なお店にしたいっていう。それは実際大変なことだと思うんですけど、そこにはどういう思いが秋長さんなりあるんですか?

秋長
わたしは、何ていうんだろうな、企業みたいなお店はあんまり好きじゃないんですね。
家業にしたかったんですよ。
昔から商店街にある豆腐屋さんとか八百屋さんとか、そういう感じの一つでありたくて。

岩田
ええ。

秋長
企業がお金儲けを目的としているとしたら、家業っていうのはそれだけじゃないと思うんですね。自分の人生がそこに映し出されているというか。
それがあるから、常連さんとか近所の人たちが愛してくれる店になるのかなあとも思うし。

岩田
そういうお店で働かれてたんですか?

秋長
いえ、違うんです。
だからこういう店をやりたかったんですよ(笑)。

岩田
ああ、そうなんですね。

秋長
前いた店は、お客さんが訪ねても、その日、誰が、どのスタッフがいるかもわからない。
だから人を目当てに来るようなお店ではなかったんです。
でもここに来れば誰かがいる。少なくともわたしがいる。
この店がどんな店かっていったら、そういうことかな。
来れば、顔見知りのお客さんがいる可能性も高い。

岩田
お客さん同士もみんなけっこう知り合いになってる。

秋長
もう今となってはそうですね。
いつ行っても同じ顔があるっていうのは、安心できると思うんですよね。

岩田
居場所ですよね。

親の働く姿


山上
最初はこたつを設置したかったんですよね?

秋長
そうなんです。こたつにずっとこだわってましたね。
みんなでこたつに入って囲炉裏を囲むっていう。

岩田
こたつ、なるほどなあ。
ここで子どもが生まれて育ってくということも含めて「煮込みや まる。」ってことなんですけど、これから子どもが成長していくと、どういうストーリーになるんだろう…?

秋長
店を手伝わせよう、と。

岩田
(笑)

秋長
とりあえず3人ぐらい産みたいので。
みんな一緒に店で育てていくっていうイメージです。

山上
働いてる姿を見せるっていうのはいいと思いますね。
忙しがってたとしても近くにいる、その姿を間近に見るっていうのが、子育てにとってもいいみたいですね。
どっかに働きに行ってしまうと何やってるのかわからない。
そうなるよりは、どんなことをやってるのか子どもも見て育ったほうがいい。

岩田
僕、家でデザインやってるんですけど、ぜんぜん、子どもには不明みたいです(笑)。

山上
わかりにくいですよね。

岩田
わかりにくい。動きとしてはパソコンを前にゲームやってるのと変わらないですからね。
7歳の子に「パパはちゃんと仕事してるの?」みたいに言われる。

山上
こっちは舞台があるから。

岩田
なんですよね。ちゃんと立って動くしね(笑)。
たぶん「まる。」さんがやられてることっていうのは、昔の日本では普通にそうだったんだろうなっていうことがここだけでは繰り返されてる。そんな匂いがありますね。

秋長
そうかもしれないですね。

岩田
それを現代は、家族制度も崩壊したし、社会のシステムもそういうやり方を通すのにはどんどん厳しい環境に整えられていってるから、そのなかで、それでもやれるんだっていうのを示してる。そういう感じはしますね。

秋長
そういうふうになりたいな、と思いますけど。

岩田
このお店、何歳までやられるんですか?

秋長
えっ? …死ぬまで(笑)

岩田
そうなりますよね。

秋長
定年がないのでね(笑)


これで秋長さんとのお話はおしまいです。
お読みいただきありがとうございました。

煮込みや まる。の煮込み


お話はおしまいですが、こちらは番外。
そんな「煮込みや まる。」さんの料理がこちらです。

モツ煮(塩)500円。

牛スジ煮。同じく500円。
こちら味噌煮込みで、あまったスープを使ってオニオングラタンをオーダーできます。

これはマカロニとポテトの二種盛りあわせダラダ。

そして写真はないですが、日本酒には、それぞれ日本の女優さんの名前が独自につけられてます。
例えば、経年の味わいが蓄積した古酒に、岸恵子。

リーズナブルで通好みな味と演出です。
ぜひみなさんも荻窪に寄ったさいには、どうぞ。

店名:煮込みや まる。
住所:〒167-0051 東京都杉並区荻窪5-29-6
電話:03-3398-8708
アクセス:荻窪駅南口徒歩1分
営業時間:夕方から終電ごろ
休日:日曜日

取材:岩田和憲、山上浩明
構成:岩田和憲
写真:酒井香菜子、岩田和憲

この記事のライター

新聞記者からカメラマンになって、フリーのデザイナーに。
なぜかこのサイトの編集長も。

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