SOYO per tutti 善光さんに訊く。前篇「個を出すお店づくり」

SOYO per tutti 善光さんに訊く。前篇「個を出すお店づくり」

恵比寿にある古木なイタリアン、SOYO per tutti (通称ソヨさん)。オープン以来、広告宣伝費ゼロ、口コミだけで拡散しているユニークな人気店です。ファンを捉えるそのグリップ力は何なのか? オーナーの善光さんにお話を伺いました。前篇は、なぜ自分のお店を持ちたいと思ったのか? などのお話。


前篇「個を出すお店づくり」

善光 知子(ぜんこう ともこ)
1981年、富山県射水市生まれ。
学生時代、18歳で飲食店でのアルバイトを始める。以後、居酒屋、ラーメン屋、蕎麦屋などホールスタッフを7年ほど経験し、東京都国立市のレストラン「文流」に。そこで料理人の山澤伸明と出会う。
12年、山澤をシェフに迎え、恵比寿にてイタリアンレストラン「SOYO per tutti」をオープン。宣伝広告を打たない口コミ経営スタイルで、個店の魅力をプロデュースしている。

こういうお店をやりたい


岩田
自分でお店をやりたいと思ったっていうことは、私ならこういう店をやりたいというイメージがあったってことですよね?

善光
ええ。

岩田
そのイメージって、今、ある程度実現している、

善光
そうですね。
わたしは、うーん、ほんとに抽象的なんですけど、みんなが笑顔になれるお店、ですよね。お客様はもちろん幸せで、働く側も幸せじゃないといけないですし、まあできれば自分たちがお世話になる業者さんにも、って思いましたね。

岩田
ていうことは裏返すと、実際そのようなお店は少ないということですよね?

善光
わたしが働いてきたなかでは少ないかな、と思います。

岩田
普通、まあそうなのかなと思います。
でもそうじゃなくて、みんなが幸せになれるようなお店をやりたいと思ったということは、善光さんはやれると思った、ということですよね?

善光
思いました。

岩田
それは、善光さんにはわかってるところがあったんですよね、おそらく。

善光
わたしだったらこうするのになあっていう生意気な(笑)

岩田
なんか僕は、ソヨさんという店はそれを実現してる気がして。まだ2回しか来てないから表面を触ってるだけですけど、善光さんはすごいコミュニケーションをする方だなあと。
それは実際問題、どこが違うのかと思って。

善光
ほんとに、濃い個人店であること。1人、2人でやってるお店さんは、情熱も思いも、薄まらないじゃないですか。人が増えるほどどうしても薄まってしまう感覚があるんですね。思いがもちろんそれぞれで違いますし、アルバイトであれば収入源であればいいだけだったりするので。

岩田
だから増やさないというのを一つの方法にしてるということですよね。

善光
そうですね。
シェフとも昔、相談をしたんですけど、おそらく2人だけでこれからもやってくかなっていう。お店の形態を2人でやっていけるほうに合わせていく。
あと、食べログさんとかぐるなびさんとか、そういう情報媒体とは関係なく存続できるお店になりたいです。そういうものに左右されるお店にならないように、なんとか頑張っていきたいなあと。

岩田
関わってる業者さんとも、いわゆる飲食店とは違うやり方をされてるんですか?

善光
どうかな。まだまだですけど…。
レベルの低い話であれば、来る業者さんに対して「そこ置いといて」とか、偉い態度をとる会社さんもあるでしょうし。じゃなくて、運んでくれる方とはコミュニケーションを必ずとる、とか。すべてなんだかんだいって人対人ですからね。そういうことは大事にしますね。

無骨な味わいが好き


岩田
お店に古木を取り入れたのも、何でしたっけ、そういう人との関係のような、一緒に年を重ねていけるから古木はいい、みたいな表現をされてましたよね。

善光
そうなんですよ。
木で作ったお店っていっぱいあるんですけど、真新しい印象の木のお店ってあんまり魅力を感じないんですね。綺麗な木で、綺麗な色で、ハイカラーでっていうのはあまり魅力を感じなくって、どっちかっていうと、ほんとに、一緒に年を重ねるような、こう、無骨でごつごつしてて味わいがある古木みたいなのが、

岩田
人も、そういう人が好きだったり?

善光
はい。おそらく(笑)

岩田
シェフもそんな人なのかな?

善光
シェフは、あのー、わたしよりずっと優しい人なんです(笑)。
見た目が覇気のある方なんで、お客様からは強面イケメンシェフとか言われてるんですけど、穏やかで柔らかくて、わたしよりずっと優しい(笑)。

「SOYO per tutti」のシェフ、山澤伸明さん。善光さんとは国立のレストラン「文流」以来の付き合いで、二人三脚でお店を切り盛りしている。

岩田
善光さんは?

善光
喜怒哀楽、ぜんぶ強いです。触れ幅が大きいので、めんどくさいんだと思います(笑)。
でも楽しいこととか、嬉しいこととか、悲しいこととか、お客様の話を聞いて共感できるだけの振れ幅がないと、サービスマンとしてつまらなくなっちゃうんじゃないかなとも思うんですね。
だから振れてもできるだけ早く戻ってくるというのが今のわたしの課題です(笑)。

個を出すお店づくり


善光
ほんとにここ1年でお店のスタンスが変わってきて。
最初はレストランをやろうっていうのでせいいっぱいだったので。
お客様をお招きしてとにかく楽しんでもらって、愛情を注ぐし、愛情を注いでもらえるっていう関係性を作るので精一杯だったんですけど。
最近は、なんていうんでしょう、とにかく自分が楽しいことをまずやっていこうっていう。それをやるとレストランという枠から少しずれるんですけど。
それでも5年間このお店をやってきて、自分が楽しいっていうことに対して乗っかってくれるお客様も増えてきたんですよね。

岩田
ええ。

善光
自分が楽しいと思っているので「楽しいですよ」ってお客様にいう。そしたら興味をもってもらえ、一緒に「楽しかったねぇ」っていうことができたりする。
そういうのがわかってきたので、最近はちょっとわたしの色が強くなるお店になってきたかなと。

岩田
それがパン教室だったりするんですね?

善光
パン教室は5月に始めたばかりで、お客様からもやってほしいっていうリクエストも以前からあったんですよ。
「どこで売ってるんですか?」「いや、作ってるんです」「知りたいです」っていう話があったけど、最初は思考的な余裕もなくて、かたちにするところまで行ってなかったんですね。
でも、そこまで言ってもらえるんだったらちょっと形にしてみようかなってところから始まって。
そんな感じで、自分がこうっていうのがもっとでてくるのかな、これから、みたいな気もしますね。


後篇につづきます。

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新聞記者からカメラマンになって、フリーのデザイナーに。
なぜかこのサイトの編集長も。

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