明治神宮を楽しむ 第2回『幸せのハート?猪目の謎を解く part2』

明治神宮を楽しむ 第2回『幸せのハート?猪目の謎を解く part2』

このあいだの続き。 第一回目は明治神宮に数多くある猪目を軸に僕の妄想を展開しました。 そして、今回はさらに妄想を膨らませます。


第1回目はこちら

猪目の謎

明治神宮には猪目が異常に多くあります。この事実は謎とは認識されていませんが、何回も通ううちに僕としては何故? という謎が深まるばかり。猪目は日本古来の文様で魔除けなどの意味がありますが、もちろん、猪目の本当の意味を知りながら、だけど、それ以外のハートマークの意味も込められているように思います。だからこそのあれだけの数のハートマーク。普通では考えられない数の猪目があるのですから、そう考えても不思議ではないでしょう。

設計者である伊東忠太は設計言語として猪目を多用する事はありません。であるなら、あの猪目の数はどう考えても多すぎです。おそらく設計の担当者が誰かの為に猪目を多用したのだと思うのです。その上で、僕はもう一つ妄想を膨らませました。

伊東 忠太(中略)少年時代を東京、佐倉で過ごす。帝国大学工科大学(現在の東京大学工学部)卒業して同大学大学院に進み、のちに工学博士・東京帝国大学名誉教授となる。西洋建築学を基礎にしながら、日本建築を本格的に見直した第一人者で、法隆寺が日本最古の寺院建築であることを学問的に示し、日本建築史を創始した。また、それまでの「造家」という言葉を「建築」に改めた。「建築進化論」を唱え、それを実践するように独特の様式を持った築地本願寺などの作品を残す。1943年(昭和18年)には建築界で初めて文化勲章を受章した。

妄想の続き

もし、僕がその担当者で誰かの為に猪目を多用したならもっと違う事も考えるはず。

おそらく、伊東忠太という偉大な先生のもとにいた担当者は、この作品に自分の名前が残される事はないと知っていたはずです。それは、先生の下で働く弟子ですし、設計業界は先生の名前は出るけど担当者の名前は世に刻まれない、というのがセオリーです。設計の担当者としては先生の為に色々な苦しいことを引き受けている。だからこそ、出来た時の喜びは何にも勝り、それと同時に自分の名前が出ないというのは虚しいことです。

一つの建築を立ち上げる事ですら先生の意図を実現する為に先生と施主、施工者との板挟みに会い、色々な思惑の受け皿として暗躍する。それはさながら思惑の墓場のようなもの。妄想の彼はそれ程苦しい事を引き受けていたように思います。

こんな国家的なプロジェクトで担当者としている事は僕からしたら奇跡ですが、そこにいた本人は死ぬ思いでこのプロジェクトに臨み、国家の為に命がけで仕事をした事でしょう。その思いは並大抵ではなく、それでも名前は残らない。その虚しさとの戦いだったと思うのです。だからこその猪目。そして、だからこそ、それだけでは好きな人への思いは収まらないはずです。そう僕は思うのです。

妄想の彼がしたこととは?

そして僕の思うところは、ベタだけど名前を刻む、という事をどこかでしたはずだ、という事です。

正月に明治神宮に行った際に、屋根に銅板を張るためのご奉賛(協賛みたいなもの)をしてきました。銅板を5000円で一枚買い、その銅板には自分の願いを書くことが出来ます。それを思い出し、私の妄想の中の担当者はどこかに彼女と自分の名前を刻んだはずだと思ったのです。だって、メイン建材は木。いくらでも刻める。そして、こんな国家プロジェクトで彼女への気持ちを表現する為に先生に黙って猪目をあんなに使ってしまう。そんな妄想の彼がそれくらいやるに決まっているのです。多分ですね、彼は実直で真面目な男で、口下手が高じてこんなベタな事をやってしまうんでしょう。でも良いんです。それが。彼女も幸せ者です。

ではどこに?

色々考えられる所はあります。棟木に棟梁の名前を書く事はよくありますが、そこには刻む事は出来ないでしょう。ではどこに名前を刻むか? 僕ならと考えると、自分が設計した神社に来る人たちをずっと二人で見ていたい、見守っていいたい、という思いも込めて玄関的な場所に名前を刻むのではないかと思うのです。

自分なら例えば神社の玄関である鳥居。実は僕は鳥居が好きで色々なところで鳥居をモチーフにしたデザインをよく使います。鳥居は神社の玄関です。神様と人間の出会う場所。みんなの行き来を見ていたい。そう思ってそこに名前を刻むこともあるでしょう。そうやって鳥居をくぐると、お邪魔します、というような気持ちになるから不思議ですね。

鳥居(とりい)とは、神社などにおいて神域と人間が住む俗界を区画するもの(結界)であり、神域への入口を示すもの。一種の「門」である。

他の玄関的なところでいうと、手水舎。いざ、本堂へというところには手水舎があります。ここも本堂へ行く前に身を清める、という意味では玄関的な意味合いがあるでしょう。この手水が100年前から同じ物なのかなんてわかりませんが、そう思いながら手を清めると、友達の家に遊びに来たような気持ちになるから不思議です。ちなみに明治神宮の手水は石ですが、この手水をいつの日かひっくり返し、見てみたいものです。

手水舎は、神社、寺院の参道脇または社殿脇に置かれ、参詣者が手や口を漱ぎ清める。多くの手水舎は、四方転びの柱が用いられ、四方吹き放しとなっており、その中に水盤が据え付けられている。柄杓が置かれており、それを使用する。柄杓にすくった一杯分の手水(ちょうず)を使い、一連の所作を行う。

明治神宮の自分なりの楽しみ方

これまでの話はあくまで妄想の話ですが、明治神宮に通ううちにもっと明治神宮を楽しみたいと思うようになり、まだ知られていない、というか絶対に知られることのない、自分だけの妄想の話を考え出し、こうやって発信することで明治神宮に裏歴史ができたら面白いなー、なんて思っていました。こうやって自分なりの話を作って通うとそれはそれで明治神宮を違った視点で見ることができます。明治神宮はとても良い場所です。原宿駅を出て一つ目の鳥居を潜ると、この暑い夏でも体感温度で2度くらい冷えたのでは?と思うくらいに涼しく、この大都会で大自然を感じられ、疲れたら食事もできます。みんなが大好きなパワースポットもあったりします。そんな良い場所を観光だけではなく日常にしたい。歴史や文化を日常に溶け込ませたく、明治神宮の知られていない歴史を作れたら思って書いています。もちろん、あくまで僕の妄想話ですが、いつの日か妄想の彼が世に出てくれる事を祈っています。

明治神宮を楽しむ 第3回『明治神宮御苑は神秘の森だった』

http://koboku.org/articles/67

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