古木なデザイナーズ会議・前篇「フェイクと本物」

古木なデザイナーズ会議・前篇「フェイクと本物」

今宵は、古木を扱う内装建築のデザイナーさん6人が集合。古木をデザインに取り込むことの難しさや面白さ、あと、そもそもデザイナーって古木を扱えるの? みたいな話までざっくばらんにトーク。前篇は、内装建築を彩るフェイクと本物について。


前篇「フェイクと本物」

本物が1つあると、空間ができてしまう。


岩田和憲(以下、岩田)
新材とは違って、規格に収まらないクセがあって、有機的な動きを持ってる。そういうものをデザイナーとして扱うっていうことにまつわるいろいろな話を今日は聞けないかなと。
例えば僕はグラフィックデザイナーをやってますけど、イラストレーターとかフォトショップとか、結局はいろいろな計算式で導き出されるルールの中で今のデザインはフィニッシュされてく面があって、一方で、グラフィックの世界も昔の看板屋さんのような手描きをやる人たちの有機的な世界があったわけで、そこでは計算ではコントロールが効かない、2つと同じものは作れないわけです。
古木をデザイナーとして扱うっていうのは、こうしたテーマがあるだろうなって思うんですね。

岩田和憲

吉田直樹(以下、吉田)
それだったらひとつ、我々がああいうものを使うときの明確な理由があって。たとえば、新品の木を使ったときは、あんまり主張しないんですよ。だけど、古木のような古い木材って、広いスペースのなかに一本、ぽんとある。それだけで物語ができちゃうんですよ。

吉田直樹

岩田
そうですね。

吉田
例えば部屋の中に、バカラのシャンデリアがあると、ほかに何も装飾物がなくても、本物がそこにあるとそれで一つの空間が構成されちゃう。そういう意味で、一点豪華主義。

岩田
目がそこへ集中するということですよね。

吉田
そうなんです。
ただ、本物じゃないとだめ。イミテーションだとダメなんです。

岩田
うん。

吉田
本物は、それだけでその場の空気感を変えるっていうのがある。例えば鉄なんかでも、薄い鉄板で箱を作っても、それって素人が見ても質感が迫ってこないというか、薄っぺらいものにしかならないんですが、もし無垢の大きな鉄の塊がボコンとあったら、素人でも、触らなくても重量感を感じるんですよ。

岩田
そうですね。

吉田
だから余計なものがなくて、古木が1本ボンってあるだけで、空間の構成ができちゃうよ、っていう。

岩田
それはある意味、デザインで空間を作るにあたって、すごい扱いやすいっていうふうにも言える。

古木の扱いにくさ


吉田
いや、扱いやすいっていうものでもない。
こういうものって倉庫へ行って実際に見てきたとしても、やっぱり現物を現場に置いてみるとぜんぜんイメージと違ってたりする。だから現場でとりあえず仮にでも立ててみないと、「えっ、ぜんぜん違うじゃん…」みたいなことになる。

岩田
デザインするときは「この木を使うぞ」っていうのは決まってないですよね?
「こういう柱のイメージでデザインします」って言って、それを「それにあった木はありますか?」っていう感じになるんですよね?

小林敬介(以下、敬介)
難波さんは特に曲がったりとか、特徴的な木をよく使ってるんですよ。

難波貴之(以下、難波)
使ってないですよ(笑)

難波貴之

小林敬介

敬介
計算しているのか、そこはよくわからない(笑)

難波
僕は図面上で曲がってるものを描いているわけじゃなくて…

敬介
描いてないの?
いやあ、曲がった木をデザインするって、すごいなあと思ってたのに。

小林賢太(以下、賢太)
なんでそうなるんですか?

小林賢太

難波
いやあ、実験されてるんじゃないですか…わかんないけど(笑)

岩田
難波さんの意図じゃないの?

賢太
難波さんは、あれなんですよ「曲がってもいいか」っていう…

難波
あんまりシビアな収まりのところに絡めていないっていうか、さっき吉田さんが仰ったように、それで一発象徴的なものとして、まあ、見せるところに使ってるというか…

賢太
難波さんと会長はすごくシンクロしてて

難波
いやいや…(笑)
一言、「曲がってるのでいいだろ?」って会長に言われて、「はい」って。それだけで。
このあいだの三鷹なんかは、現場に会長がいらっしゃって、そこで、あのー、

敬介
三鷹って、カフェの入り口にある?

難波
そう

敬介
あのすごい曲がってる

三鷹のカフェ「記憶の岸辺」入り口に立つ古木

すごい曲がってます。

難波
それは会長が僕の図面を見て、「これだと面白くないだろ」ってことで…

一同
(笑)

デザインというフェイク


吉田
結局、デザインって、僕はフェイクだと思ってるんですよ。だって、お店を作ろうが建築を作ろうが、新建材を主に使って作るわけじゃないですか。つまり人工素材を使うわけじゃないですか。新しい木材を使ったとしても、人間が電動の機械で削って、それで仕上げたものを使うわけじゃないですか。そういう意味では僕の中ではフェイクなんですよ。
でも古木って、そうじゃない。電動の工具を使って加工したものじゃない。人の手で伐り出し、人の手で削ったものですよね。植物でいえば、人が人工的に栽培した植物と、山の中に自生している植物の違い。

岩田
フェイクの究極としてディズニーランドっていうのがあるじゃないですか。大人になって20数年ぶりぐらいに行ったんですけど、子どものときに見たのと同じ姿でびっくりしたんですけど。あれはすごいですね。あのフェイクを維持するっていうのは…

敬介
朽ちないのか、直しているのか。

一同
いや、直してる。

岩田
だから、ね、ディズニーランドを古木で作ったら面白いだろうなって思って。人の夢はフェイクの中に宿るけど、それを本物のなかに宿らせたらすげえだろって。

敬介
ああ、現実のものでね。
でもメンテが大変だろうね。

吉田
一方で例えば、古材を特別なカメラで撮影して、それを床材のタイルに転写したり、もしくはエンボスをかけたりして。どう見ても本物の古材の板にしか見えないんですが、触ると、セラミックなんですよ、みたいな。
そこまでして今はこういうものを使いたい、っていうのが多くなってる。

敬介
今、そういう商品、タイルも古材のようなフェイクのものがいっぱいあるし、世界的に需要があるんですよね。シャネルだったか、どこかのブランドのウィンドウ材で、フェイクなのか、ヴィンテージ風のものが使われてるのを見て、ナショナルブランドでさえもそっちへ行っちゃうのかと。
そういう世界観っていうのは今、ありますよね。

味なのか、汚れなのか。


吉田
あとはその、本物っていうと、流行り廃りがほとんどない。

岩田
そうですね。

吉田
結局、10年後でも20年後でもチープ化しないんですよ。それをフェイクで作っちゃうと、特に日本人の性格上、短いスパンで飽きるんですよ。次のトレンド、ってなる。
あとは、新しい材料って、時間が経つと汚れます。壁も塗装だと、それは汚れになるんですけど、昔ながらの漆喰で仕上げると汚れじゃなくて味なんですよ。だから味なのか、汚れなのか。受け取る人の感覚的なものにもよりますけど、それもすごく不思議だなあと思います。

後篇へつづきます。

古木なデザイナーズ会議・後篇「できること、できないこと」

http://koboku.org/articles/48

古木を扱う内装建築のデザイナーさん6人が集合して、古木とデザインについて雑談トーク。後篇は、デザイナーとしてできることと、デザイナーではできないこと、限界について、古木の本質と絡めてトークします。

この記事のライター

新聞記者からカメラマンになって、フリーのデザイナーに。
なぜかこのサイトの編集長も。

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