「純黒糖に惹かれて」黒糖茶房 大森健司さんに聞く その2

「純黒糖に惹かれて」黒糖茶房 大森健司さんに聞く その2

沖縄離島の純黒糖に魅了され、日本ただ一つといわれる黒糖専門店「黒糖茶房」を立ち上げた大森健司さん。そんな大森さんのユニークな遍歴を辿りながらのインタビューです。第2回は、黒糖専門店を立ち上げようとする大森さんに、沖縄の人、本州の人が示した反応のお話、など。


Profile

大森 健司(おおもり けんじ)
黒糖茶房オーナー。
1968年、東京都杉並区生まれ。学生時代よりスキーに親しみ、卒業後はスキー用品やスキーイベントの営業企画、民宿でのアルバイトなど仕事を転々とする。スキー仕事の閑期である夏、沖縄へ旅行したことをきっかけに黒糖に開眼。2012年4月、黒糖専門のカフェ「黒糖茶房」を神奈川県茅ヶ崎市にオープン。夫婦二人三脚で黒糖の魅力を発信している。

なぜ黒糖の産地は離島なのか?

岩田 和憲(以下、岩田)
なんで黒糖の産地って、人口の少ない離島が中心になるんですか?

大森 健司(以下、大森)
もちろん土壌の問題とか気候の問題とかもあると思うんですけど。
実は昔はこの辺(神奈川県茅ヶ崎市)でもサトウキビができてたらしくて、

岩田
ああ、そうなんですか。

大森
昭和の初期になるのかな、戦時中、そのちょっと前くらいまで「この辺にもサトウキビあったんだよ」っていう話も地元の方から聞きますね。

岩田
へえ。

大森
作物として作ってたのか、単に自生してたのかはわからないんですけど。
でも今は、沖縄、鹿児島とかにしか残ってない。

岩田
その沖縄、鹿児島でも、本土、本島ではなくて、離島なんですよね。

大森
離島では産業として始めてるんです。
でも今では、国のお金も入ってどうにか成り立ってるっていう状況で、収入の半分は国からの補助金だって言われてる。

岩田
沖縄本島とか石垣島とか、ある程度ターミナルになるようなところっていうのはほかにも産業があるから、黒糖のようなあんまり収益性のないものは…

大森
かもしれないですし、黒糖だけっていうのは効率がよろしくないのかもしれないですし、そこはわからないです。
製糖工場は沖縄本島にもあるし、宮古島でも石垣島でもあるんですよ。でもそこでは黒糖は作ってないんです。黒糖をつくる工場と原料糖をつくる工場っていうのが違ってて、同じところじゃないんですね。
サトウキビはもちろんいろんなところで作ってる。つまりお砂糖はどこも作るんですけど、黒糖は離島でしか作ってないんです。作り方がちょっと違うんで。
結局、原料に回してしまう砂糖っていうのは、まあ、究極で言えば白いお砂糖ですよね。
雑な言い方をすると白いお砂糖って黒糖のミネラルとかそういう成分をいっさい漂白して抜いちゃったものが白いお砂糖になってくるんですね。沖縄本島とかにあるのはそういう工場なんです。
なんで離島になったかっていうのは、これはいろいろ諸説あって、財閥系のお金の話から、土地のしがらみの話から、過去を紐解くといろいろあるらしく。

岩田
へえ。

黒糖を買い付けるのは難しい!?

大森
なので今では、黒糖を買えるかっていうと、なかなか直接買えなかったりもするんです。

岩田
代理店経由じゃないと?

大森
そうですね。基本的にはそうじゃないと買えないです。

岩田
今はどうされてるんですか?

大森
えっと、工場から直接買ってます(笑)

岩田
交渉して?

大森
僕らは工場を訪ねてるので、その話の中で、買わせてもらえるようになって。

岩田
けっこう時間かかりました?

大森
最初、できないって言われてましたね。
直接買えるようになってから今年で3年目ですね。

岩田
どうやって実現させたんですか?

大森
工場へ直接行って、人と会って、ですよね。
そのときはもう黒糖茶房っていうお店あったから話が通りやすいっていうのもありましたね。
それ以前はお店がなかったので、ほかのルートでなんとか仕入れてたんですけど。

岩田
お菓子屋さんからのルートでしたよね?

大森
そうですね。
ただ、お菓子屋さんから買うって言っても、お菓子屋さんまでもいくつか代理店がある。
うちも高いお金を払って売ってもらってたので、できればもうちょっとダイレクトにまとめて買えればいいなあ、と思ってたので。

岩田
お店を何年かやってきた実績を認知されて、

大森
そうですね。
で、工場まで来る人って大手のお菓子屋さんとか関連会社の人とか、それこそ名の知れた製菓工場とか製パン工場とか、そういう関係者たちばっかりなんですよ。
直接消費者に会うような、僕らみたいな個人はほとんど来ないですね。

岩田
けっこう繰り返し工場を訪ねたんですか?

大森
お店を始めるにあたって沖縄には何回も行ってますけど、実際お店を始めちゃうと休みがとれないので、そんなに離島の工場まで繰り返し行けてるわけではないんです。
ただ沖縄の黒糖を仕切ってる協同組合があって、そこはもうずっと行ってて、コンタクトも常にとってますね。唯一、そこからぜんぶの島のものが買えるので。
その組合の紹介で工場へ行けることになって、そこでいろんな話をして、なんとか買わせてもらえるようになったっていう。

黒糖専門店をやる? 沖縄と本州の人の反応。

岩田
大森さんみたいな沖縄県外の人が黒糖の専門店をやるっていうことに対して、沖縄の人はどんな反応でした?

大森
黒糖に絡んでる人たちは「そういう話だったらぜひ協力します」って。
でも「そんなのできるんかい?」っていうのがまあ沖縄の一般の人の意見。
沖縄の人たちにとっては黒糖なんて別になんてことはない、ただの砂糖で家に必ずあるお菓子なので。
スーパーに行っても棚一面、黒糖がある。そういう中で生活されてるから、「黒糖でお店なんかできるの?」っていう話が多かったですね。
まあでも、それはこっち(本州)でいろんなお菓子屋さんとかと話した時もそうでしたけど。
展示会とかいろいろ回って、黒糖を扱ってるところへ行って、「こういうお店やりたいんですけど、どう思います?」って聞いても、「そりゃ無理だよ」っていう声の方が多かったんです。

岩田
そうなんだ。

大森
「いいですね」って言ってくれた人はほぼいないですね。
だから、「僕はなんか間違ったものをやろうとしてるのかな」ってそのとき思って(笑)
「これはやっちゃいけないことなのかな」と。

岩田
ああ…。

大森
「もしかしたらここは踏み込んじゃいけない話なのかな」っていう感じもしましたね。
ただ、黒糖には付加価値があって面白い食材だと僕は思ってたので、「売り方一つでは絶対大丈夫だ」っていう自信も半分はあって。

岩田
ええ。

大森
あとはそれをどうやって売ってくか。そこはブランディングの話なので、そこさえ間違えなければたぶん大丈夫だな、っていうふうには思ってたんですね。
ものを売る仕事をずっとしてたので、ものは売るノウハウはある。
あと、飲食の世界で育ってきたわけじゃないので、染まりきってない。
つまりお客さんにいちばん近い立場にいたんですね。
「自分だったらこういう店がいいな」とか、「こういう黒糖のものがあったらいいな」とか、そういう視点が強くて。
「それをうまく表現できればたぶん大丈夫だろうな」って奥さんと話してて。
あとはどうやって表現するかだけを考えてましたね。

岩田
うん。

大森
黒糖っていうのは、ほんとに、僕からすると表現しやすい。
勉強すればするほどストーリーもあるし、話も面白いし、健康にもいいし。
でも、みんなよく知らない。
黒糖という言葉は知ってるけど、黒糖のことはよく知らない。
それってやっぱり面白いですよね。


次回へつづきます。

> 次回(最終回)はこちら

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新聞記者からカメラマンになって、フリーのデザイナーに。
なぜかこのサイトの編集長も。

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