サンクゼールの久世さんに聞く、ブランドの育て方。その2

サンクゼールの久世さんに聞く、ブランドの育て方。その2

40年ほど前、家庭で作ったジャムから始まったジャム屋さんが、どうやってここまで成長してきたのか? 代表取締役専務の久世良太さんに聞いてきました。第2回は、ブランドの裏に潜む、インフラ構築のお話などです。


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ブランドの育て方。その2

久世 良太(くぜ りょうた)
株式会社サンクゼール代表取締役専務。父は同社社長の久世良三。 1977年、長野市生まれ。2002年、電気通信大学大学院卒業。セイコーエプソン勤務を経て05年、株式会社斑尾高原農場(現・株式会社サンクゼール)に入社。12年、代表取締役専務に就任。

大正ロマンというコンセプト


久世 良太(以下、久世)
それとちょうどそのころ、サンクゼールというブランドのブームが少し去った、っていうと語弊があるんですけど、少し飽きみたいなものが出てきたころだったんですよ。
でも、自分たちはまだもっと表現できるんじゃないかなっていう意識はあったんですね。
そもそもわたし自身が毎日和食を食べてて、それを美味しいなと思っている。消費者として、「もっとこだわりのものがあれば買いたいよね」っていう思いもある。
そんなときにイオンモールさんのほうから、「幕張のイオン本社の真ん前に本店を作るプロジェクトがあって一年後にやるから、久世さんたちもぜひ新業態にチャレンジしてもらえないかな」って言われたんですよね。

さらにそのころ、中国事業が反日運動があったりしてなかなか厳しかったんですよ。中国事業をぜんぶ撤退して、その人材を使ってこの久世福商店のプロジェクトを作ったんですね。
当時、2人しかいなかったんですけど、

岩田 和憲(以下、岩田)
久世福商店プロジェクトのメンバーがですか?

久世
そうです。わたしも入り込んでやるんですけど、プロジェクトのメンバーとしてはその2人でしたね。

山上 浩明(以下、山上)
普通そういうことって、外部の会社や人材を入れてやる場合が多いんですけど、外部からは誰か入れました?

久世
入れてないですね。自社でやったんです。
ただロゴだけはデザイナーにお願いしました。
古いようで新しくて、新しくて古い。大正ロマンっていうのをひとつのコンセプトにして。

岩田
それはデザイナーサイドではなくて、サンクゼールさんのほうで設定したデザインコンセプトですか?

久世
そうです。
大正時代のデザインってけっこう秀逸で。いろんな会社が世界に輸出していこうっていう時代ですよね。デザインも昔からのものを受け継ぎつつ、新しいものにチャレンジする、そんなイノベーティブな部分を感じさせるものがあって。
自分たちも「サンクゼールっていうブランドを受け継ぎながらもっと新しいものにチャレンジして第二の創業みたいなところでやっていこう」っていうところでもあったので。大正時代の商人の心意気みたいな。「打って出ようよ」っていう感覚を表現したいなって思ったんですね。
だから大正時代のデザインをいろいろ集めて、そういう資料もぜんぶデザイナーさんにお渡しして。
ほかにも倉敷の美観地区に行ってみたり、愛媛の内子町に行ってみたり。いろんなところへ行ってイメージを撮ったり商品のデザインを記録したり。それでなんとなく自分たちの想いはぶつけさせてもらって。
それを一つのチームに入ってもらってキャッチボールしながらデザイナーさんにかたちにしてもらったっていう感じです。

こだわって作ってる人はたくさんいる。でも流通経路がない。


久世
プロジェクトの2名は全国を飛び歩いたんですよ。「お味噌は必要だよね」「ちょい飲みのお酒のおつまみになるものも欲しいよね」って。いろんなカテゴリーを「これは欲しいよね」って言って。
結果、「2,500アイテム欲しい」ってなったんですよ。

岩田
へえ。

久世
当然それはサンクゼールだけでは作れない。で、「わからないので教えてください」みたいな感じで、いろんなメーカーへ行かせてもらって。久世福商店の提案書を書いたんですよ。「こういうコンセプトのお店を来年12月までにやりたいので、ぜひ商品を作って欲しいです」って。
そしたら、みなさんけっこう喜んでくださって。
メーカーさんも本当に美味しいものを作りたいんだけど、量販店さんだとまず原価のことを言われて、なかなかリスクのあることはやりたがらない。百貨店さんはこだわりのものを置いてくれるけど、それが通年販売できるかっていうと、これもなかなか。つまり販路がないっていうことに悩まれていて。
そこを久世福商店が、はじめは1店舗かもしれないけど、一緒に組むことで販路が開ける。
そのとき提案書に、「15店舗出します」って書いたんです。

岩田
まだ1店舗しか決まってないときにですよね?

久世
まだ1店舗しか決まってないときに「15店舗ぐらいは出せると思います」って。「ぜひ一緒にやっていきませんか?」って。
そしたらすごく喜んでくれて。「ぜひ一緒にやらせてほしい」って言ってくれる社長さんが多かったんですよね。
同時に「わたしたち、こういうのを開発したくて」っていう話をさせてもらったら、「彼のところへ行ったらどう?」って。

岩田
ネットワークですか。

久世
ネットワークで教えてくれて。「あそこはこだわりがあるから間違いないから」って。
そういう口コミで徐々に広がっていったんですね。

岩田
こだわって作ってる、出したいっていう人は、ほんとはこの世界にいっぱいいるけど、今の日本ではそれを売る流通のかたちがない…

久世
なかったんですよ。意識が効率化だけにいっちゃってて、そのポジションがぽっかり空いてたっていうか。
もともとはそこを百貨店がやってたと思うんですけど。もう百貨店さんも自分でバイイングするパワーがなくなってきてますよね。
やっぱり現場に行くと、バイヤーが行ってる、行ってないっていうのはすぐわかるじゃないですか。問屋さん任せになっちゃってるお店では、ほかのお店と同じものが並んじゃってますよね。
そういったところも、わたしたちも行ってはじめてわかったんです。

ブランド構築の裏にあるインフラ構築の苦労


岩田
逆に苦労したっていうところは?

久世
苦労したのは、こだわりの商材っていうのは集められるんだけど、それを商売上に乗せていく、収益性っていうのを考えないといけないって思ったのと、もうひとつは、これを開発するためには裏側のインフラが欠かせないんですね。

岩田
裏側のインフラ?

久世
というのは、2,500アイテムを取り揃えるには、物流がすごい大変なんですよ。
今までサンクゼールって、600アイテムぐらいしかなかったんですね。

岩田
多品目で奥行きを少なくするっていうことですか。

久世
そうなんです。
サンクゼールは物流をどうやってたかというと、1ケース12個という単位でお店に送るんですよ。それを大量陳列してお買い求めいただく。600アイテムで、ある種特化型なんですけど。
それに対して久世福商店は2,500アイテムあるので、1つのアイテムをケース単位で送られちゃうと店の中が在庫だらけになっちゃう。

岩田
確かに。

久世
つまりうちの物流の仕組みを変えないと絶対ダメだって思ったんですよ。
単品でピックアップしてそれをお店にまとめて送る仕組みですね。それを信濃町に作り上げようっていう、

山上
けっこうそれは…

岩田
大変ですよね。

久世
そうなんですよ。
信濃町に1,000坪くらいの工場があって、もともと電子部品を作ってた工場で。そこが撤退されて空き家になってるところを買ったんですよ。

岩田
へえ。

久世
怖いじゃないですか?
まだ店舗もないのにインフラに投資しなきゃいけないって。
そこの思い切り、「やろう」って言って飛び込んだっていうのがまず大変だったのと、あと、物流の仕組み。
ピックしてっていうのは人間でできますけど、それをじゃあ「エクセルでぜんぶコントロールできるか?」っていったら絶対できない。外注化してシステム作るっていっても間に合わない。
これはもう内製化しようって。
SEをヘッドハントして全部内製化したんですよ。

岩田
へえ。



次回につづきます。

> 次回(最終回)はこちら

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新聞記者からカメラマンになって、フリーのデザイナーに。
なぜかこのサイトの編集長も。

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