「養豚場が生き残る道」平野養豚場を訪ねて。その2

「養豚場が生き残る道」平野養豚場を訪ねて。その2

小規模家族経営ながら廃業の危機を乗り越え、着実に認知を広げていく千葉県木更津市の平野養豚場。小規模農家が今立たされている現状とは? 危機を乗り越えるための視点とは? 第2回は、生産者を追い込む安物買い消費者マインドについてのお話です。


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その2「生産者を追い込む安物買い」

平野養豚場(ひらのようとんじょう)
千葉県木更津市にある同市唯一の養豚場。庭先養豚に始まり、1973年にSPF豚の養豚場として開設。現在は三代目の平野賢治さん、恵さん夫婦が中心となり、抗生物質やワクチンを抑えた林SPF豚を1400頭育て、「木更津の恵みポーク」としてブランド展開している。

屠場に売るだけの生産者


平野 恵(以下、恵)
最初まわったとき、どの飲食店さんにもぜんぜん相手にされなかったんですよ。

平野 賢治(以下、賢治)
「うちは別のところとお付き合いがあるから」って。


それが今はけっこう増えて。
数えれば20店舗ぐらいあるんじゃないのかな。

岩田 和憲(以下、岩田)
廃業になりそうになったときは、そういう販路がなかったんですね?

賢治
ぜんぜんないですね。
そもそも木更津に養豚場があることを、


そう。たぶんほとんどの人が知らないんです。

岩田
そのころは、育てた豚は屠場に売るだけだった、ってことですか?

賢治
そうですね。競りにかけられて。その先は…
こっちに戻ってくる販路がなかった。


ない。都内にばらまかれちゃうんです。

岩田
一般的な養豚場っていうのは今もそういう形式なんですか?

賢治
そうですね。

岩田
自分たちで販路を拡大するなんていうことは、


ない。
やってる人がいるとしたら、ほんと、田舎のほう。
田舎の屠畜場に持ってって自分で買い戻して。
でも飲食店を開くのも資格が必要じゃないですか。
お肉屋さんも資格が必要で、お肉をばらすのも技術なので何年も修行しなくちゃいけなかったりするので、全部できるっていう人はそんなにいないと思う。

岩田
なるほどね。

賢治
まあ、うまくいった事例は聞かないよね。失敗事例はいっぱい聞くけど。
生産だけでいっぱいいっぱいになっちゃって。

安物買いのシワ寄せ


岩田
そもそもなんで養豚の世界、まあ農業の世界全体がそうだと思うんですけど、こんなに厳しいんですか?


わたし、講演をたまにするんですけど、そのときに言うのは、みんなちゃんとした価格を知らないんだな、って。対価ですよね。ここ何年もの傾向ですけど、みんな安物買いをするじゃないですか。ファストフード大好き。100円で詰め放題とか。
果たしてそれがどんな努力のもと育てられてるのか、っていうのを知らない。

岩田
そうですね。


だから安物買い。
スーパーとかそういうところは、ちゃんと別のところで儲けてるのかもしれない。みかんの詰め放題で100円。でもお客さんの買い物はみかんだけで絶対終わらないじゃないですか。それをきっかけに、キャベツ買って、キュウリ買って。そういうところを狙って安い詰め放題とかもやってるけど、やっぱり、そういうところで豚肉をすごく安く売られちゃうと、いちばんシワ寄せがくるのって、一次産業なんですよね。
そういうことを卸売りの人たちが考えてないのかなって思うし、買う人たちも考えてない。
わたしもこの世界に飛び込むまでは考えたことなかった。ブラジル産の鶏肉とか買ってたし(笑)。なんで国産が高いのかって考えたこともなかった。

賢治
顔が見えるようになればね。
「そこそこの値段でも応援しよう、その人から買おう」ってなるから。
そういう点では野菜は進んでるけど、豚で顔をだして売る発想はなかった。
まあ、顔を出したがらない。豚の生産者ってね。

岩田
それはなぜ?

賢治
面倒くさがりだね(笑)
農場のなかで完結しちゃうから。出荷もドライバーがいたりするから。
誰にも会わないで365日。

岩田
そういうことをやってきた業界じゃないから、と。

賢治
そうですね。外に視点がいかない。
「こうすれば誰が買う」とか「こうすれば高くなる」って同業者に言っても、みんな、ぽかーん。


今のところ、「あの人たち、ちょっとおかしなことやってる」みたいな感じだと思う(笑)

「美味しかった」のフィードバック


岩田
飲食店をちょっとメディアとして考えてるところはあるんですか?


それはないかな。
もともとはスーパーに入れたかったんです。

賢治
お肉屋さんなんだけど、あっさり断られて(笑)
間に業者を挟んでやっているから、そこを抜くわけにはいかない。
やっぱりお肉屋さんは世襲なんで、親父の代からの付き合いがあったりで。


顔が立たないじゃないですか、ほかから仕入れちゃうと。
そんななかではやっぱり飲食店さんがちょっと飛び込みやすかった。

賢治
誇りがあってね、自分が美味しいと思ったものしか出さなかったりするから。

岩田
僕は実際ブッフルージュさん(*)で木更津の恵みポークを食べて、そこに置いてあった平野養豚場さんのパンフレットも見たんです。つまりブッフルージュさんがメディアとして機能してて、「ああ、こういう養豚やってる人がいるんだ」と知る、みたいな流れはあったんです。
飲食店以外では、マルシェみたいなイベントにも出されてますよね。
みんなが集まる場所だということで、これもメディアですよね。
飲食店だってそういうメディアとして使い得るのかなと思ったんですけど。

*ブッフルージュさん … 木更津にある洋食屋「洋食とワイン ブッフルージュ」のこと。


最終的にはそうなるのかもしれないですけど、何より飲食店に出すと「ありがとう」とか「美味しい」っていう言葉が聞けるんですよ。
この業界って家族でやってて、そこで仕事が済んじゃうので、なにも肯定的な発言がないんですよ。わたし、もともと看護師をやってたので「ありがとう」って言われることに慣れてたんです。でも、ここにきたら、そういう言葉が何もない。

岩田
なるほど。

次回へ続きます。

> その3「知って選ぶ」

この記事のライター

新聞記者からカメラマンになって、フリーのデザイナーに。
なぜかこのサイトの編集長も。

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