「純黒糖に惹かれて」黒糖茶房 大森健司さんに聞く その3

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「純黒糖に惹かれて」黒糖茶房 大森健司さんに聞く その3

沖縄離島の純黒糖に魅了され、日本ただ一つといわれる黒糖専門店「黒糖茶房」を立ち上げた大森健司さん。そんな大森さんのユニークな遍歴を辿りながらのインタビューです。最終回となる第3回は、お店づくりの裏話や、黒糖を通してのこれから、などのお話です。

Profile

大森 健司(おおもり けんじ)黒糖茶房オーナー。
1968年、東京都杉並区生まれ。学生時代よりスキーに親しみ、卒業後はスキー用品やスキーイベントの営業企画、民宿でのアルバイトなど仕事を転々とする。スキー仕事の閑期である夏、沖縄へ旅行したことをきっかけに黒糖に開眼。2012年4月、黒糖専門のカフェ「黒糖茶房」を神奈川県茅ヶ崎市にオープン。夫婦二人三脚で黒糖の魅力を発信している。

なぜ不安でもブレなかったのか?

岩田 和憲(以下、岩田)
スタートアップのころって不安じゃないですか?

大森 健司(以下、大森)
はい。

岩田
たとえ間違ったやりかたをしてないとしても、軌道に乗るまでにはある程度時間がかかりますし、

大森
そうですね。

岩田
そうなるとさらに不安になるから、余程じゃないとブレるかなと思うんですけど。
そこだけはブレなかったんですね。

大森
そうですね。
ただ、明けて2年目ってすごいツラかったんですよ。売上的にも自分たち的にも。夜は店を閉めて働きに行こうと思ってたので。
「そのかわりお店はブレさせずにやろう」っていうのは2人で話してたんです。
今でもそれはありますね。
黒糖からブレちゃいけない。ブレたら淘汰されちゃうし、勝てないから。
…まあ、勝つ負けるじゃないですけど、他のお店はそういう世界で修行されてた人がやってるお店だから、そこを補うにはブレさせたらいけない。
…ただ、僕はブレブレでしたけどね(笑)

岩田
えっ、そうなんですか?

大森
(笑)

岩田
つまり、奥さんが?

大森
奥さんが「絶対ブレたらダメ」って言い続けたんで。

岩田
それは素晴らしいですね。

大森
「これ、どうかな?」「あれ、どうかな?」って僕は言うんだけど、「そうじゃないでしょ」って怒られつつ。
いつも修正してくれるのは奥さんで。
まあね、素晴らしく助かりましたね。
自分一人だったら失敗してました。

黒糖はいろいろ組み合わせられる

岩田
黒糖コーラっていうのがあるんですね。

大森
そうなんですよ。沖縄で作ってるコーラなんですけど。

岩田
ああ、シフォンケーキとかね。

大森
あとはランチですね。ランチだとこういうものがあるんですけど。

岩田
食事も出してるんですね。
煮物とかに黒糖を入れるんですか?

大森
そうですね。
あと小鉢とか、お椀に黒糖を使うので。

岩田
基本的にあらゆる料理やスイーツを作るときに、砂糖ではなく黒糖を使うんですか?

大森
そうです。
砂糖、みりん、その代わりになるんですね。

岩田
ふんふん。なるほど。
黒糖ドライキーマカレー、親子丼とか。
コクが違いますか?

大森
コクが違ってきますね。
カレーなんかにしても、最初に甘さがきて、あとから辛さがくるっていう。

岩田
例えば沖縄の普通の食堂って黒糖を調味料で入れたりしないんですか?

大森
ラフテーとかは黒糖で煮るので、煮物とかには入ってますけど。
こういうカレーとか沖縄料理じゃないものには、あえて入れられてるところもあると思うんですけど、あんまり入れてるっていう話は聞かないですね。
沖縄にも黒糖専門のお店がないものですから。
基本的にはどこにでもある料理とかデザートなんですけど、これだけ黒糖って組み合わせられるんだよっていうのを、自分たちは言いたいんですね。

岩田
普遍的な食材ですね。

大森
そうですね。
昔からそんなに大きくは変わらない。でも食材としては和菓子屋さんでも洋菓子屋さんでもコーヒー屋さんでも、いろんなお店でひとつはメニューにのっかる食材なので、「これはまとめられるでしょう」って思って。
それで、ある程度話の雰囲気の中でお客さんにあんまり抵抗感なくスッと提案できるようなものができれば、普段使いのなかに入り込めるのかなと。

黒糖をもっと広めたい

岩田
この先で考えてること、何かあります?

大森
人とお金の問題があるのであくまで考えでしかないんですけど、可能であれば、沖縄でやってみたいっていうのはもちろんあるんです。

岩田
はい。

大森
現地で黒糖のお店っていうのが、うちのスタイルでどれだけのできるものなのか。
もう一つの部分でいえば、黒糖をもっといろんな人、飲食店の人に知ってもらいたくて。
一般の人に紹介するのではうちだけでは限度がある。
であれば、黒糖は素材なので、それこそイタリアンだろうがなんだろうが合わせようと思えば合ってくるはずで、僕より経験豊かな人にそれぞれのお店でうまく使ってもらえるようなことができればいいなあ、と思いますけどね。

岩田
うん。

大森
もっと多くの人が黒蜜や黒糖に興味を持って欲しいし、それで黒糖が好きになってくれればいいなあと。
大手さんがどんどんやってくれるぶんにもいいし、他のジャンルの方がどんどん使ってもらえると嬉しいな、っていうのはありますね。
黒糖を使った飲食店がもっと出てきてくれたら自分の刺激にもなりますし。

岩田
うん。
今日はありがとうございました。

黒糖茶房鍋ぱふぇ

最後に、僕が黒糖茶房で食べたメニューがこちらです。

タジン鍋のような土鍋で出てくる、こちら。
黒蜜を添えて。木板のプレートには黒糖茶房の焼印がしてあります。

蓋を開くと、

こんな華やかな景色。
看板メニューの「黒糖茶房鍋ぱふぇ」です。

黒糖のゼリー、そして南国のマンゴーが入ってます。
黒糖と水だけで作った黒蜜をかけて。
ちなみに黒糖だけでなく、アイスや白玉、そのほかの具も丁寧に仕込まれていて、これがまた美味しいです。

茅ヶ崎に行ったら、ぜひみなさんもお試しください。


取材・構成・写真:岩田 和憲

この記事のライター WRITER

岩田和憲

グラフィックデザイナー。言葉と写真もデザインも同じものとして扱っています。元新聞記者。元カメラマン。岐阜県出身。 https://www.iwata-design.com/