「古木でつくる新しい経済」山翠舎 山上浩明さんに聞く その2

インタビュー
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「古木でつくる新しい経済」山翠舎 山上浩明さんに聞く その2

古木をフックに利益をつくり、人の繋がりをつくり、さらには経済圏を生み、一つの世界観、価値観を投げかける。そんな新しい挑戦をつづける山上さんのインタビュー。第2回は、この挑戦を実現に向けていくための実際的な方法やビジョン、そして動機などのお話です。

古木の経済圏をつくりたい

岩田
そうやってここまで伸びてきたわけですけど、今はどこを目指されてるんですか?

山上
これ、言っちゃっていいのかな。

岩田
言うぶんにはいいんじゃないですか。

山上
古木の世界観ですべてが回る、そういう経済圏をつくりたいですね。
古木でつくったお店があって、そこにファン、つまりエンドユーザーがいて、そのお店に行ってお金を支払う。そこでお店の人に儲かってもらって、次のお店をつくる。で、また、ファンが増えていく。
要するに、古木に関係する人たちで成り立つ経済圏をつくっちゃう。

岩田
生活がまわるっていうことですね?

山上
そう。
もちろん全部依存しなくたっていいわけです。
古木でつくったNさんのお店が儲かっている。そこにくるそのお店のファン、古木でつくった空間のファンがいる。そのファンの方は別にほかのお店のファンでもある。
で、そうしたお店が儲かるノウハウを増やすために、koboku倶楽部*をつくったわけです。

*koboku倶楽部 … 山翠舎が主催する会員制の倶楽部。店舗オーナーをはじめ古木に関係する人たちを対象に、店舗経営のノウハウ蓄積や人の繋がりを生み出すことを目的に、セミナーや交流会などを開いている。( koboku倶楽部について、詳しくはこちら )

山上
倶楽部で知恵を与え、パワーアップしていく。そして仲間もどんどん増えていくと。
そんな感じで考えてますよ。

山上
あと、古木のコーディネーター。
今、認定制度を作りたいんですよ。

岩田
古木のコーディネーター。それはなんですか?

山上
要するに、「古木が好きなんです」と。古木に詳しい人。
まずは社員が古木コーディネーターの資格をとる。1番、2番と認定番号があって、社員で20番ぐらいまでいく。関係者で100番。そこから1,000になり、1万になり、最終的には10万人ぐらいになるのかな。そこはわからないですけど。
例えば広葉樹があります、針葉樹があります、それぞれこういう特徴があります。「じゃあお客様は、これこれこういうご希望でしたら、ここは針葉樹にしましょう」。
そういうふうに古木について語れる人をたくさんつくっていって、古木のファンを増やしていく。
イメージとしてはアフィリエイトなんですけど。

岩田
なるほど。

山上
そうして古木が一本売れたらその人に5,000円がバックされる。
そうすると古木コーディネーターに対してもお金が落ちてくるようになる。
さらに古木をつかって施工する加盟店、古木の販売店と、プロの人たちを増やしていく。
そうやって古木の市場を広げていくことによって、山翠舎の仕入れ能力がさらに上がる。
今、古木が3,500本ありますと。山翠舎だけだったら月50本しか使えませんと。
でもたくさんのコーディネーターや加盟店や販売店を通して古木を使う人が増えていったら、月500本を使うようになるじゃないですか。

岩田
ええ。

山上
そうなるとうちも強気でどんどん古木を仕入れられるようになる。古民家も高く買っていきたいんです。
山翠舎が古木を買うことができるようになる、古民家を高く買えるようになるっていうのが重要なんです。
なぜかっていうと需要と供給の法則で、欲しい人が増える。1万円でも買いたいですっていう状況を作れれば、これまで自分たちが長年住んできて愛着のある古民家を取り壊すしかなかった、そういう持ち主の方が、嬉しくなるんです。
その中心に山翠舎がいて、この循環を回す。
そうすることによって、すべてにおいてお金が落ちていく。
そういうプラットフォームによって、いろんな人が生かされる。
儲かるという次元は置いておいて、まずはそこを目指す。

岩田
うん。

潰れにくい会社を作りたい

山上
私、人生がすべて繋がってきてるなあと思ってるんです。

岩田
というと?

山上
私、ソフトバンク出身なんですね。
ソフトバンクって、はじめ、ソフトの流通から始まった企業なんですよ。パソコンソフトの流通。
これが何をモデルにしてるかっていうと、本の流通から入ってるんですよ。凸版印刷とか。
出版社があって、そこに凸版印刷という流通会社があって、本屋さんがある。
この流通会社が、言ってみればスーパー銭湯なんです。

岩田
スーパー銭湯?

山上
要するに本の流通の中心にいるわけです。
オモチャだったらハピネットなんですよ。
そういう流通会社があって、世の中に流れていく。
で、ソフトバンクっていうのはソフトの流通をやっていた。この「流通を握る」っていうのが、ポイントなんです。

岩田
うん。

山上
あと私、学生時代、オペレーシングシステムっていうのが好きだったんです。
みなさん、たいていはマイクロソフトのWindowsじゃないですか。私はLinuxとかが好きだったんです。
OSってベースですよね。パソコンっていうアーキテクチャーがあるわけですけど、そのベースがOSで、そのOSの上にアプリケーションがのってくる。
OSが重要なんです。
「何がいちばんインテリジェントなOSなのか?」って、追求してたわけですよ。
その競争があって、マイクロソフトがOSの実権をとったわけじゃないですか。今はアップルに変わってきてますけど。
そういうプラットフォーム的な場所が大切かなっていうのをずっと思っていて。
OS、つまりある意味のインフラですよ。なくてはならない、根ざしているもの。
そこを握ることがなぜポイントになるかというと、そこを握れば潰れにくい会社になるだろうと考えているんです。

岩田
なんとなくわかります。

山翠舎が古木で内装を手がけた居酒屋「魚貝ののぶ」

山上
利益率はともかくとして、何より潰れにくい会社を私はつくりたいんですよ。
代理店があります。加盟店があります。古木のコーディネーターがいます。で、古木の世界観ができていったら、あとはもう勝手に、というと変ですけど、自然に仕事がくるじゃないですか。
そういう、小さくても潰れにくい会社をつくるっていうのが私の使命感としてあるんです。
なんでこれだけのハングリー精神が私にあるのか。その原動力は何かっていうと、結局、潰れにくい会社をつくるっていうことなんです。
社員が20名だとします。山翠舎中心の業者を集めれば50人ほどの組織になります。50名に対して家庭が3名か4名いる、それでいうと170名ぐらいいます。
私が会長から叩き込まれた1つのスピリットとしては、社員とその家族だけじゃないんです。山翠舎と関係する業者の方も、ぜんぶ一緒に考える。
それには今日よりも明日、今月よりも来月、今年よりも来年、仕事を増やしていきたい。
それが、みんなにとって嬉しいことだと、私は思ってるわけです。
逆に、それが嬉しくない人は離れていくわけです。
「夜中にまた変な問い合わせが来たよ」って思う人は、離れていっちゃう。
私の周りには仕事が増える。私個人の人生ミッションとしてはそういうのがあるんですよ。

岩田
ええ。

山上
実は今、採用の問い合わせがすごく多いんですよ。
能力のある人をたくさん採用しよう、と。
ということは、それだけ売り上げを増やさないといけないわけですよ。
自分で自分の首を絞めてる、みたいな(笑)

岩田
(笑)

この記事のライター WRITER

岩田和憲

グラフィックデザイナー。言葉と写真もデザインも同じものとして扱っています。元新聞記者。元カメラマン。岐阜県出身。 https://www.iwata-design.com/